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    更新日:2025.06.13  公開日:2025.06.12

訪日インバウンドプロモーション戦略:ターゲット国の選び方

円安や世界的な日本文化への関心の高まりを背景に、訪日外国人旅行者は増加の一途をたどっています。同時に、日本の製品やサービスにも海外から多くの注目が集まっており、インバウンドビジネスは今、大きなチャンスを迎えています。
この好機を確実な成果へ結びつけるには、自社に最適な国・地域を見極め、的を絞ったプロモーションを行うことが不可欠です。
本記事では、データに基づいたターゲット国の選定方法から、各国の特徴に合わせた施策の考え方まで、訪日インバウンドプロモーションのポイントを解説します。

1. 訪日インバウンドプロモーションにおけるターゲット国選定の重要性

プロモーションを始める前に、まず「なぜ国を絞る必要があるのか」を理解することが大切です。ここでは、ターゲット選定がもたらす3つの具体的なメリットから、その重要性を確認します。

  1. 投資対効果(ROI)の最大化
    訪日インバウンドプロモーションでは、限られた予算とリソースの効率的な活用が成功の鍵です。訪日需要や自社製品・サービスへの関心が高い国に絞ることで、投資対効果(ROI)を最大化できます。
  2. 文化や習慣の違いへの対応
    国ごとに文化、習慣、法規制は大きく異なります。ターゲット国を明確にすることで、現地の特性に最適化されたプロモーションを展開でき、施策の成果を高められます。
  3. コミュニケーションコストの削減
    対応国が増えるほど、言語対応やクリエイティブ制作、カスタマーサポートなどのコストは膨らみます。やみくもに対象を広げるのではなく、自社の強みや目的に合った国へ集中投資することで、リソースを効率的に配分できます。

2. ターゲット国を選ぶための主な判断基準

では、具体的にどのような情報をもとにターゲット国を選べばよいのでしょうか。この章では、市場の全体像から顧客の具体的な姿までを明らかにする、4つのデータ分析の切り口を解説します。

マクロデータ:公的統計で市場の全体像を把握する

まずは、インバウンド需要の全体像を把握するために、公的機関が提供する公式データを活用しましょう。国別訪日客数や旅行動向などの情報を入手することで、大まかな需要の傾向や国ごとの伸びを予測することが可能です。

観光庁

https://www.mlit.go.jp/kankocho/

観光白書や各種レポートを通じて、訪日客数や旅行動向をまとめた公式データが得られます。

日本政府観光局(JNTO)

https://www.jnto.go.jp/

国別訪日外客数や旅行動向、訪日外国人の消費動向など、インバウンド市場分析に有用な統計資料が豊富。

国際機関や各国政府統計

世界銀行(World Bank)、IMF、OECDなどの国際機関データを照合することで、訪日需要に影響を与える各国の経済状況や人口動態を併せて確認可能。

📝公的データを活用するメリット

  • 客観性と信頼性
    政府や国際機関が発表するデータのため信頼性が高く、客観的な判断の土台となります。
  • 市場規模の把握
    どの国からの訪日客が多く、どれくらいのお金を使っているのか、市場全体のポテンシャルを数字で把握できます。
  • 成長市場の発見
    過去からの推移を見ることで、どの国が成長トレンドにあるのか、将来性を予測するためのヒントが得られます。

ミクロデータ:自社データで顧客像を具体化する

マクロデータで市場全体を把握したら、次は自社サイトのアクセス解析や検索データを分析し、「どの国のユーザーが、自社にどう関心を持っているか」を明らかにします。検索データと自社データを組み合わせることで、より精度の高いターゲット選定が可能です。

Google Search Console

https://search.google.com/search-console

自社サイトがどの国で、どのようなキーワードで検索されているかを確認。潜在的なニーズを可視化します。

アクセス解析ツール(例:Google Analytics)

国別のアクセス数、滞在時間、コンバージョン率を分析し、エンゲージメントの高い国を特定します。

問い合わせ・購買履歴自社データ

BtoBなら問い合わせ元の国、BtoC(越境ECなど)なら購入者の国を分析。既に成果が出ている国は最優先候補です。

📝自社データを活用するメリット

  • リアルタイムかつ具体的
    公的な統計データに比べて最新のトレンドを把握しやすい。
  • 実際の興味・関心を反映
    公式データでは把握しきれない「顧客の検索行動」や「コンバージョン行動」を直接確認できる。
  • 優先度の明確化
    アクセス数だけでなく、問い合わせや購入など成果につながる行動が多い国を高優先度で狙える。

経済指標:経済成長率と購買力で将来性を見る

インバウンド需要に加え、対象国の経済状況や購買力も重要な判断材料です。経済成長が著しい国や、今後消費意欲の高まりが見込まれる国は、中長期的なビジネス成長の可能性があります。

  • GDPや一人当たりの所得水準
    安定した経済成長や購買力の高さは、今後も需要が継続的に見込める可能性が高いと言えます。
  • EC市場の拡大傾向
    訪日だけでなく、その国でのオンライン購買意欲が高い場合は越境ECとしての展開も視野に入れられます。

国際通貨基金(IMF)

https://www.imf.org/en/Data

世界経済見通し(World Economic Outlook)をはじめ、各国のGDP成長率やインフレ率など、世界経済の大きな流れを把握するためのマクロ経済データが豊富です。

世界銀行(World Bank)

https://data.worldbank.org/

各国の人口動態、一人当たりGNI(国民総所得)、インターネット普及率など、国の発展段階や生活水準を測るための基礎的なデータを入手できます。

OECD(経済協力開発機構)

https://www.oecd.org/

主に先進国を中心とした加盟国の経済・社会データを比較分析するのに役立ちます。労働市場や教育水準など、より詳細なテーマの統計が揃っています。

Statista

https://www.statista.com/

多様な業界の市場規模や消費者動向などをグラフ付きで分かりやすく提供する民間データベース。EC市場の規模など、特定のトピックを調べる際に便利です(一部有料)。

📝経済指標を見るメリット

  • 未来の有望市場を発見
    現在の訪日客数だけでは見えない、「これから伸びる国」を発見できます。高い経済成長率は、未来の旅行需要や購買力の増加を示唆します。
  • 高単価ビジネスとの相性判断
    一人当たりの所得が高い国は、高価格帯の製品やサービスへの需要が見込めるため、LTV(顧客生涯価値)の高い顧客層を狙えます。
  • 事業の安定化(リスクヘッジ)
    安定した経済基盤を持つ国をターゲットにすることで、特定の国の景気後退による影響を避け、事業の安定性を高めます。

市場環境:競合の動向から勝ち筋を見つける

国を選定する際は、競合他社がどの国を重視しているのか、また現地市場の競争状況を把握することも大切です。自社が勝ちやすいマーケットを見極めることで、効率的なプロモーションが可能となります。

SimilarWeb

https://www.similarweb.com/

競合サイトの推定トラフィックや国別アクセス比率、主要流入経路などを確認。

eMarketer

https://www.emarketer.com/

グローバルにおけるデジタルマーケティングや広告費動向などの最新レポートを参照。

検索エンジン広告アカウントのインサイト

Google広告やMicrosoft Advertising(Bing Ads)などの地域別データから、クリック数、CV率が高い国を推定。

📝競合・市場環境を分析するメリット

  • 効率的な市場参入
    競合がひしめく市場を避け、競争の少ない「勝ちやすい市場」を見つけることで、少ないコストで成果を出しやすくなります。
  • 戦略の差別化
    競合の強みや弱みを分析することで、自社が取るべき独自のポジションや、顧客に響くメッセージを明確にできます。
  • リスクの低減
    競合がどの国で成功/失敗しているかを参考にすることで、自社の戦略立案におけるリスクを減らし、成功の確度を高めることができます。

3. 配信プラットフォームと国ごとの特徴

ターゲット国が決まったら、現地のユーザーに確実にリーチできる広告プラットフォームを選定します。日本で主流のプラットフォームが海外で通用するとは限りません。

検索エンジン広告

日本ではGoogle広告やYahoo!広告が主流ですが、国によってはBingやNaver、Baiduなど、利用者が多い検索エンジンが異なります。検索エンジン広告の配信先を選ぶ際は、現地での利用シェアや広告の実装機能の違いを確認することが大切です。

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SNS広告

Facebook(Meta)やInstagramはグローバルに強いSNSですが、一部の国や地域では独自SNSが根強い人気を持っています。たとえば、中国ではWeibo、タイではLINEが積極的に活用されるケースがあります。配信時には、現地のユーザー属性やプラットフォームの使用状況を検討することが必要です。

ディスプレイ広告 / 動画広告

地域や国によって、人気の高いメディアや動画配信プラットフォームは大きく異なります。
例えば、世界的に動画コンテンツの需要が高まる中、YouTubeだけでなく、各国で多くの視聴者を持つローカルな動画サイトを把握しておくことが、効果的な広告出稿につながります。
また、タイの巨大掲示板サイト「Pantip」や台湾の大学生に人気の「Dcard」など、現地のコミュニティに根付いた有力なメディアも、広告の配信先として検討するとよいでしょう。

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4. ターゲット国選定プロセスの具体的ステップ

具体的な選定プロセスを5つのステップで解説します。

ステップ1:目的とKPIを明確にする

  • 目的
    訪日観光客の誘致、越境ECの売上拡大など、プロモーションのゴールを定義します。
  • KPI
    目的に基づき、サイト流入数、問い合わせ数、購入数など、具体的な数値目標を設定します。

ステップ2:データ分析と市場調査

  • 2章で解説した公的データ、自社データ、市場環境などを分析し、客観的な根拠を集めます。

ステップ3:仮説立案と優先順位付け

  • 分析結果に基づき、有望なターゲット国の候補を複数リストアップします。
  • 予算やリソースを考慮し、テストマーケティングを行う国の優先順位を決定します。

ステップ4:施策のローカライズと実行

  • ターゲット国に合わせて、広告クリエイティブやランディングページを言語・文化的に最適化(ローカライズ)します。
  • 現地の主要プラットフォームで小規模なテスト配信を開始します。

ステップ5:効果測定と改善

  • 配信結果を定期的にモニタリングし、KPIの達成度を評価します。
  • データに基づき、施策の改善(PDCA)を繰り返し、効果の高い国への投資を拡大したり、新たな市場の可能性を探ったりします。

5. まとめ:データに基づいた国選定で、訪日インバウンドプロモーションを成功に導く

訪日インバウンドプロモーションの成否は、ターゲット国をいかに的確に選定できるかにかかっています。市場規模、競合、自社の強みなどを多角的に分析し、最適な国へ集中的にアプローチすることが成功への近道です。

  • データと目的が起点
    まずは公的統計と自社データを分析し、プロモーションの目的と照らし合わせる。
  • 小さく始めて大きく育てる
    有望な国をいくつか選び、小規模なテストで効果を検証してから本格的な投資を行う。
  • ローカライズを徹底する
    言語や文化はもちろん、現地の主要な広告プラットフォームの特性を理解し、施策を最適化する。
  • PDCAで継続的に改善
    一度決めた国に固執せず、運用データをもとに常に見直しと改善を続ける。

世界には多様な市場が広がっており、そこには無限の可能性があります。データに基づいた適切な国選定と丁寧なローカライズ施策で、効果的な訪日インバウンドプロモーションを展開していきましょう。

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