円安や世界的な日本文化への関心の高まりを背景に、訪日外国人旅行者は増加の一途をたどっています。同時に、日本の製品やサービスにも海外から多くの注目が集まっており、インバウンドビジネスは今、大きなチャンスを迎えています。
この好機を確実な成果へ結びつけるには、自社に最適な国・地域を見極め、的を絞ったプロモーションを行うことが不可欠です。
本記事では、データに基づいたターゲット国の選定方法から、各国の特徴に合わせた施策の考え方まで、訪日インバウンドプロモーションのポイントを解説します。
目次
プロモーションを始める前に、まず「なぜ国を絞る必要があるのか」を理解することが大切です。ここでは、ターゲット選定がもたらす3つの具体的なメリットから、その重要性を確認します。
では、具体的にどのような情報をもとにターゲット国を選べばよいのでしょうか。この章では、市場の全体像から顧客の具体的な姿までを明らかにする、4つのデータ分析の切り口を解説します。
まずは、インバウンド需要の全体像を把握するために、公的機関が提供する公式データを活用しましょう。国別訪日客数や旅行動向などの情報を入手することで、大まかな需要の傾向や国ごとの伸びを予測することが可能です。
観光白書や各種レポートを通じて、訪日客数や旅行動向をまとめた公式データが得られます。
国別訪日外客数や旅行動向、訪日外国人の消費動向など、インバウンド市場分析に有用な統計資料が豊富。
世界銀行(World Bank)、IMF、OECDなどの国際機関データを照合することで、訪日需要に影響を与える各国の経済状況や人口動態を併せて確認可能。
📝公的データを活用するメリット
マクロデータで市場全体を把握したら、次は自社サイトのアクセス解析や検索データを分析し、「どの国のユーザーが、自社にどう関心を持っているか」を明らかにします。検索データと自社データを組み合わせることで、より精度の高いターゲット選定が可能です。
自社サイトがどの国で、どのようなキーワードで検索されているかを確認。潜在的なニーズを可視化します。
国別のアクセス数、滞在時間、コンバージョン率を分析し、エンゲージメントの高い国を特定します。
BtoBなら問い合わせ元の国、BtoC(越境ECなど)なら購入者の国を分析。既に成果が出ている国は最優先候補です。
📝自社データを活用するメリット
インバウンド需要に加え、対象国の経済状況や購買力も重要な判断材料です。経済成長が著しい国や、今後消費意欲の高まりが見込まれる国は、中長期的なビジネス成長の可能性があります。
世界経済見通し(World Economic Outlook)をはじめ、各国のGDP成長率やインフレ率など、世界経済の大きな流れを把握するためのマクロ経済データが豊富です。
各国の人口動態、一人当たりGNI(国民総所得)、インターネット普及率など、国の発展段階や生活水準を測るための基礎的なデータを入手できます。
主に先進国を中心とした加盟国の経済・社会データを比較分析するのに役立ちます。労働市場や教育水準など、より詳細なテーマの統計が揃っています。
多様な業界の市場規模や消費者動向などをグラフ付きで分かりやすく提供する民間データベース。EC市場の規模など、特定のトピックを調べる際に便利です(一部有料)。
📝経済指標を見るメリット
国を選定する際は、競合他社がどの国を重視しているのか、また現地市場の競争状況を把握することも大切です。自社が勝ちやすいマーケットを見極めることで、効率的なプロモーションが可能となります。
競合サイトの推定トラフィックや国別アクセス比率、主要流入経路などを確認。
グローバルにおけるデジタルマーケティングや広告費動向などの最新レポートを参照。
Google広告やMicrosoft Advertising(Bing Ads)などの地域別データから、クリック数、CV率が高い国を推定。
📝競合・市場環境を分析するメリット
ターゲット国が決まったら、現地のユーザーに確実にリーチできる広告プラットフォームを選定します。日本で主流のプラットフォームが海外で通用するとは限りません。
日本ではGoogle広告やYahoo!広告が主流ですが、国によってはBingやNaver、Baiduなど、利用者が多い検索エンジンが異なります。検索エンジン広告の配信先を選ぶ際は、現地での利用シェアや広告の実装機能の違いを確認することが大切です。
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Facebook(Meta)やInstagramはグローバルに強いSNSですが、一部の国や地域では独自SNSが根強い人気を持っています。たとえば、中国ではWeibo、タイではLINEが積極的に活用されるケースがあります。配信時には、現地のユーザー属性やプラットフォームの使用状況を検討することが必要です。
地域や国によって、人気の高いメディアや動画配信プラットフォームは大きく異なります。
例えば、世界的に動画コンテンツの需要が高まる中、YouTubeだけでなく、各国で多くの視聴者を持つローカルな動画サイトを把握しておくことが、効果的な広告出稿につながります。
また、タイの巨大掲示板サイト「Pantip」や台湾の大学生に人気の「Dcard」など、現地のコミュニティに根付いた有力なメディアも、広告の配信先として検討するとよいでしょう。
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具体的な選定プロセスを5つのステップで解説します。
訪日インバウンドプロモーションの成否は、ターゲット国をいかに的確に選定できるかにかかっています。市場規模、競合、自社の強みなどを多角的に分析し、最適な国へ集中的にアプローチすることが成功への近道です。
世界には多様な市場が広がっており、そこには無限の可能性があります。データに基づいた適切な国選定と丁寧なローカライズ施策で、効果的な訪日インバウンドプロモーションを展開していきましょう。
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