台湾は亜熱帯〜熱帯に属し、一年中温暖で湿度が高い気候です。北部(台北など)には春夏秋冬の季節感がありますが、南部(高雄など)は年中暑く季節差が少なめです。年間平均気温は台北で約24℃、高雄で約26℃とされ、特に冬は日本よりずっと暖かいです。降水量は地域差が大きく、台北近郊の淡水では年約2,400mmにも達する一方、南部の台南では約1,740mmと少なめです。雨は5〜9月の梅雨・台風期に集中し、台北では真夏の月間降雨量が300〜400mmに達します。逆に秋〜冬(11〜3月)は乾季で晴天の日が増えるため、日本人旅行者にはこの時期が人気です。
台湾の台風シーズンは夏から初秋(7〜9月)で、毎年いくつかの台風が接近・上陸します。台風による豪雨は時に「一晩で年間降水量の3分の1」を降らせる記録的大雨となり、土砂災害や洪水を引き起こすことがあります。反対に2020年のように台風が全く来ない年もあり、その場合は深刻な水不足に陥ります。実際、2020年は雨期も短く、翌2021年には50年ぶりの大干ばつとなりました。また近年は猛暑も深刻で、台北では真夏日に38℃台後半という過去最高クラスの気温を観測しています。台湾全体の年間平均気温も上昇を続け、2024年は過去128年で最高の24.97℃に達しました。
地球温暖化による台湾の気候変動は顕著です。過去100年で平均気温は約1.5℃上昇し、年間降水量は大きく変わらないものの雨の降る日数は減少しており、短時間に降る強雨の頻度が増加しています。今後は夏がさらに長くなり、冬が短縮すると予測されています。環境当局の報告では、対策なしで温暖化が進めば台湾の夏は7カ月に延び、猛暑日(最高気温36℃超)も年間75日も増えると警告されています。海面上昇に伴う沿岸部農地の水没リスクも指摘され、+2℃の温暖化で雲林県の土地の4%、台南市の3%が水没する恐れがあります。
気候変動は台湾の農業や観光にも影響を及ぼしています。例えば暖冬化でイチゴの生育周期が乱れ始めたため、農家は耐暑性の新品種「台農1号草莓」を開発するなど対策を進めています。南部では地温の上昇により、これまで難しいとされた熱帯フルーツの栽培も試みられています。実際、農業試験場が中心となって台湾南部でドリアンの接ぎ木栽培に成功し、5年で結実するモデルを確立しました。観光面では、高山での降雪が減り冬の雪景色が希少になる一方、夏場の猛暑日は屋外観光に注意が必要です。初夏の風物詩だった高山植物の開花時期も年によってずれが生じており、例えば玉山(台湾最高峰)の高山シャクナゲは年によって開花が半月遅れるなど気候に翻弄されています。このように台湾の気候は楽観できない変化を遂げつつありますが、豊かな南国の魅力と上手に付き合いながら、安全に旅や生活を楽しみたいものですね。