コロナ禍以降、観光業は各国で大きな打撃を受けたが、台湾からの海外旅行市場は2023年以降、急速に回復し、2024年にはパンデミック前の水準をほぼ取り戻す勢いを見せている。なかでも日本は台湾人にとって不動の人気渡航先であり、2024年には年間600万人超が訪日。出国者の実に3人に1人以上が日本を訪れている計算となる。
この流れの背景には、円安による“お得感”、交通アクセスの改善、旅行規制の緩和、そして何より台湾人の日本文化への親和性がある。
■ショッピング重視型の消費行動
台湾人観光客は、訪日中の支出において最も多くの予算をショッピングに充てている。2023年の日本政府観光局(JNTO)の統計によると、台湾人1人あたりの平均訪日消費額は約18.9万円(約4万台湾ドル)に達し、そのうちの約7万円が買い物に使われている。
特に人気なのは、化粧品・医薬品、菓子類、アパレル製品。台湾国内のSNSでは日本の限定商品やコラボグッズが話題となり、現地での“爆買いリスト”が定番化している。店舗側が繁体字でのPOP表示、QRコード決済への対応、免税手続きの簡略化を行えば、さらに購買意欲を後押しできるだろう。
■「食」へのこだわりも強く
日本食は台湾人の圧倒的な人気を誇る料理ジャンルであり、旅行の目的としても非常に重要な要素だ。ラーメン、寿司、焼肉などは定番だが、近年はミシュラン店や地方の郷土料理、さらには食イベントなどにも注目が集まっている。食を軸にした地域活性化や地方誘客の施策は、台湾市場に対しても非常に有効である。
■宿泊・交通の選好:利便性と体験の両立
宿泊施設の選定では、駅近で清潔なビジネスホテルが依然人気だが、近年は温泉旅館やユニークな宿泊体験(古民家滞在など)へのニーズも高まっている。また、地方観光を楽しむためにレンタカー利用が増えており、特に北海道、沖縄、九州などで台湾人によるレンタカー移動が一般化しつつある。
■自由旅行が主流、しかし半自助型にもビジネスチャンスがある
台湾の海外旅行では、自由旅行(FIT)の比率が75%を超えており、特に40歳以下では8割以上が自由旅行を選んでいる。一方で、一定の利便性を求める層に対しては、「半自助型」(航空券+ホテル、現地ツアーのみ別手配)の人気も拡大中。日本の地方自治体や旅行事業者が台湾向けにこうした形態の商品開発を行えば、訴求力は非常に高い。
■日本企業・自治体にとっての参考情報
台湾からの訪日観光は、今後も日本観光業界にとって重要な柱であり続ける。購買力の高さ、訪問頻度の多さ、そして日本文化への深い理解と愛着。これらの特徴を的確に捉えることで、観光・小売・飲食・宿泊すべての分野において、より持続的なインバウンド戦略が構築できるだろう。