2022年以降、中国の日用品市場は安定した成長を続けていますが、その背景には、所得層ごとに異なる消費行動の広がりがあります。特に日用品のような生活に密接したカテゴリでは、消費者の所得水準が購買意思決定に大きな影響を与えています。
本コラムでは主に都市部の世帯年収を基準に以下のように分類しています:
日用品に対して非常に高い価格感度を持ち、「安くて使える」商品を求める傾向が顕著です。実店舗ではディスカウントストアや地元の市場を多く利用し、オンラインでは拼多多(Pinduoduo)などの低価格を打ち出したECプラットフォームが人気です。
しかし、単に「安いだけ」では選ばれません。品質や口コミ評価にも敏感で、コストパフォーマンスの高い商品を見極める力に長けています。これは「消費の格下げ」ではなく、「より賢い選択」へと進化した証とも言えるでしょう。
都市部を中心に拡大し続ける中間所得層は、現在の中国消費市場の中心的存在です。日用品においても、単なる安さではなく、「品質の良さ」と「価格の妥当性」のバランスを重視する姿勢が顕著です。
例えば、環境に配慮した洗剤や、健康志向の商品への関心が高く、多少価格が高くても納得のいく品質にはお金を払います。一方で、ECサイトを活用した価格比較や、キャンペーン時の「まとめ買い」で賢く節約する一面もあります。
この層は、ブランドへの信頼やサステナビリティといった「価値」にも目を向けており、企業にとってはリピーター獲得とロイヤルティ強化のカギを握る層と言えるでしょう。
高所得層は、日用品においても“ラグジュアリー”や“快適さ”を重視し、高品質で独自性のある商品に投資する傾向があります。たとえば、オーガニック原料の洗剤やデザイン性の高い生活雑貨、サステナブルな製品などが支持されやすい領域です。
とはいえ、価格が高ければ何でも買うというわけではなく、「その価値があるか」を慎重に見極める姿勢が見られます。特に近年では、環境配慮や社会的責任に配慮したブランドへの共感が重視されており、消費は「自己表現」の一手段としても捉えられています。
彼らにとって、日用品も「生活を彩るツール」としての側面があり、利便性や審美性のある商品が高く評価されます。
このように、中国の日用品市場では、所得水準によって明確に異なる消費傾向が見られます。低所得層は「実用性と価格」、中間層は「品質と合理性」、高所得層は「体験価値と理念への共感」を重視しており、それぞれが市場における独自の価値観を築いています。
今後、中国市場で競争力を持ち続けるためには、「誰に向けて」「どのような価値を届けるのか」を再定義し、よりきめ細やかなマーケティングと商品設計が求められるでしょう。