台湾では出生数の減少が続いていますが、マタニティ・ベビー関連の消費市場は依然として活発です。
その背景には、政府による育児支援の拡充と、若い世代の「時間と安心をお金で買う」という価値観の変化があります。
ここでは、2025年現在の台湾マタニティ・ベビー市場の特徴と注目トレンドをご紹介します。
2024年の台湾の出生数はおよそ14万1,000人となり、依然として少子化傾向にあります。しかし、政府が推進する「0〜6歳国家一起養(0〜6歳を国家が共に育てる)」政策によって育児コストが軽減され、育児関連サービスや商品の購入意欲は高まりつつあります。育児手当や保育サービス/託児サービスの引き上げも後押しとなり、共働き世帯を中心に「安心と効率のための投資」が一般的になっています。
台湾では、出産後の母親をサポートする「月子中心(産後ケアセンター)」が急増しています。全国でおよそ250施設が運営されており、料金は1泊4,500〜15,000台湾ドル(約2〜7万円)と幅広い価格帯です。
看護体制や食事の質にこだわる施設が多く、人気施設では予約が取りづらい場合もあります。
また、自宅に食事を届ける「月子餐(産後食)」や、「泌乳顧問(授乳コンサルタント)」などの訪問型サービスも拡大しています。
このように、出産から育児初期までを一貫して支える“トータルケア市場”が形成されつつあります。
台湾のママたちは、口コミや体験談を重視する傾向が強いです。特に「媽咪拜(MamiBuy)」や「BabyHome」といった育児専門サイトは、製品レビューやおすすめ情報を共有する場として定着しています。そのため、「SNS→口コミ→EC購入」という購買フローが一般的になっています。
台湾最大級のECサイト「momo(富邦媒)」では、紙おむつやミルク、授乳用品などのリピート商品が安定して売上上位を占めています。
また、LINEグループやオンラインコミュニティ経由での共同購入(団購)も広がっています。
近年、台湾の育児世帯では「肌にやさしい」「環境にやさしい」商品への関心が高まっています。
低刺激のベビーソープや無香料のスキンケア、詰め替えタイプの洗剤など、サステナブル志向と育児ニーズを両立させた商品が人気です。
一方で、台湾では0〜12か月の乳児向け粉ミルクの広告が法律で制限されています。そのため、企業は安全性や専門情報を中心に訴求する必要があります。「母乳優先」の理念を尊重しながら、信頼性の高いブランドイメージを築くことが重要です。
カテゴリー | 主な成長要因 | 代表的人気ブランド |
---|---|---|
紙おむつ | 通気性・夜間の漏れ防止・肌にやさしさ | Pampers、Merries、MamyPoko |
授乳・哺乳用品 | 職場復帰支援、PPSU素材、防ガス(防げっぷ)構造 | Pigeon、nac nac、Simba |
清潔・スキンケア | 低刺激、詰め替え、環境配慮 | 六甲村、MammyShop |
産後ケア・サービス | 産後ケアセンター(月子中心)+産後食(月子餐)+訪問ケア | 各地ローカル業者 |
ベビー移動用品 | 安全基準対応・軽量化 | Chicco、Apricaなど |
台湾の若い家庭は「品質・信頼・デザイン性」に敏感で、日本ブランドに対する信頼は依然として根強いです。特に「清潔・安全・やさしい使用感」という日本製品のイメージは高く評価されています。
マタニティ・ベビー分野は、日本企業にとって有望な市場といえるでしょう。
効果的なアプローチとしては、次のような方法が考えられます。
少子化が進む中でも、台湾の家庭は「より良い育児環境」に積極的に投資しています。マタニティ・ベビー市場は、単なるベビー用品の販売にとどまらず、家族の安心と生活の質を支える“ケア消費”市場として発展を続けています。