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1. はじめに:ECサイトにおけるSEOの重要性と構造化データの役割
3. ECサイトで活用すべき主要な構造化データとその実装方法
3-2. Review(レビュー)とAggregateRating(評価の集計)の構造化データ
3-3. BreadcrumbList(パンくずリスト)の構造化データ
3-4. HowTo(ハウツー)とFAQPage(よくある質問)の構造化データ
競争が激化するEC市場において、新規顧客獲得やリピート率、売上向上は多くのサイト運営者の課題です。その中で、検索エンジンで上位化を目指すことは、潜在顧客が商品を探す際に目に留まりやすい機会を増やし、結果的にサイト訪問数の増加につながる戦略の一つとなります。
この可視性を高めるための施策がSEO(検索エンジン最適化)です。近年のSEOは、単にキーワードを羅列するのではなく、ユーザーの検索意図を深く理解し、質の高い情報を提供することに重点が置かれています。特にECサイトにおいては、商品情報やレビューといった多岐にわたる情報を正確に伝えることが重要になります。
しかし、検索エンジンは人間のように直感的に情報を理解するわけではありません。ウェブページに書かれた内容を、より正確かつ効率的に伝えるための強力な手段が、構造化データです。これにより、検索エンジンはサイトの情報を明確に認識し、検索結果での表示を最適化できるようになります。
近年、構造化データがSEOにおいて重要視されているのは、主に以下の3つの要因が背景にあります。
これらの要因から、構造化データは単なるSEOテクニックにとどまらず、ECサイトが検索エンジンからの集客を最大化し、競争優位性を確立するための、現代のSEO戦略において不可欠な要素となっています。
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「リッチリザルトとは何か?導入のメリットと実装の際に注意すべき点」
構造化データとは、ウェブページ上の情報を、検索エンジンが理解しやすいように、あらかじめ定義された語彙(ボキャブラリー)を用いてマークアップ(タグ付け)したデータのことです。具体的には、HTMLコード内に特別なタグや属性を追加することで、ページ内の各要素がどのような情報(例:商品名、価格、レビュー、イベント日時など)を表しているのかを明確に指示します。
このマークアップには、主に「Schema.org」というウェブサイトで定義されている語彙が利用されます。Schema.orgは、Google、Microsoft、Yahoo!、Yandexといった主要な検索エンジンが共同で開発・推進しているボキャブラリーであり、非常に多岐にわたるエンティティ(実体)やプロパティ(属性)を定義しています。例えば、「Product」というエンティティには、「name(商品名)」「price(価格)」「description(説明)」「image(画像)」「offers(提供情報)」といったプロパティが定義されています。
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初心者向け!構造化データとは?SEOに必須な理由をわかりやすく解説
構造化データを実装する際に用いられる主なマークアップ形式は、以下の3つです。
これらの形式で、ウェブページ上の個々の情報要素に意味を持たせることで、検索エンジンはページの内容をより正確に解釈し、検索結果での表示方法を最適化することができます。
構造化データは、ECサイトに具体的なSEO効果をもたらし、主な効果は以下の通りです。
これらのSEO効果は、ECサイトの集客戦略において、トラフィックの増加、コンバージョン率の向上、そして最終的な売上増加に大きく貢献するものです。
ECサイトの集客効果を最大化するためには、サイトの特性に合わせて適切な構造化データを実装することが重要です。ここでは、ECサイトで特に活用すべき主要な構造化データ「商品」「パンくずリスト」「よくある質問」とその実装方法について解説します。
「Product」の構造化データは、ECサイトの商品ページにおいて最も基本的かつ重要なものです。これにより、商品名、画像、説明、価格、在庫状況、ブランド、レビュー、評価といった商品に関する詳細情報を検索エンジンに伝えることができます。
「Product」でマークアップすべき主なプロパティ (@type: Product/Offer):
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
name | 必須 | 商品名 |
image | 推奨 | 商品画像のURL、複数指定可能 |
description | 推奨 | 商品の説明文 |
brand | 推奨 | ブランド情報 |
sku | 推奨 | 在庫管理単位(SKU) |
gtin | 推奨 | 国際識別番号(JANコード、EANコードなど) |
offers | 必須 | 販売情報 |
aggregateRating | 推奨 | レビューの集計情報 |
review | 推奨 | 個々のレビュー情報 |
price | 必須 | 価格 |
priceCurrency | 必須 | 通貨コード(例: JPY, USD) |
availability | 推奨 | 在庫状況(例: https://schema.org/InStock) |
url | 推奨 | 商品ページのURL |
実装方法(JSON-LD形式の例):
<script type=”application/ld+json”> { “@context”: “https://schema.org/”, “@type”: “Product”, “name”: “高性能ワイヤレスイヤホン”, “image”: [ “https://example.com/images/earphone-main.jpg”, “https://example.com/images/earphone-detail.jpg” ], “description”: “ノイズキャンセリング機能搭載、長時間再生可能な高性能ワイヤレスイヤホン。”, “sku”: “SKU123456”, “mpn”: “MPN789012”, “brand”: { “@type”: “Brand”, “name”: “TechAudio” }, “offers”: { “@type”: “Offer”, “url”: “https://example.com/products/earphones”, “priceCurrency”: “JPY”, “price”: “15000”, “availability”: “https://schema.org/InStock”, “seller”: { “@type”: “Organization”, “name”: “Example Store” } }, “aggregateRating”: { “@type”: “AggregateRating”, “ratingValue”: “4.5”, “reviewCount”: “125” }, “review”: [ { “@type”: “Review”, “author”: { “@type”: “Person”, “name”: “山田太郎” }, “datePublished”: “2023-10-26”, “reviewRating”: { “@type”: “Rating”, “ratingValue”: “5” }, “name”: “音質が素晴らしい!”, “description”: “期待以上の音質で満足しています。ノイズキャンセリングも効果的です。” }, { “@type”: “Review”, “author”: { “@type”: “Person”, “name”: “佐藤花子” }, “datePublished”: “2023-10-25”, “reviewRating”: { “@type”: “Rating”, “ratingValue”: “4” }, “name”: “バッテリー持ちが良い”, “description”: “一日中使ってもバッテリーが持つので安心です。” } ] } </script> |
ECサイトでは、ユーザーによる商品レビューは購買意欲に大きく影響します。ReviewとAggregateRatingの構造化データを実装することで、検索結果に平均評価(星の数)やレビュー数を表示させることができ、クリック率の向上に繋がります。
「Product」の構造化データ内にaggregateRatingやreviewとして含めるのが一般的ですが、レビューページ自体に特化したマークアップも可能です。
実装方法については、「3-1. Product」の例を参照してください。
AggregateRatingでマークアップすべき主なプロパティ(@type: AggregateRating):
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
ratingValue | 必須 | 平均評価点(例: 4.5)サイト上の表示と構造化データで一致させる必要があります。 |
reviewCount | 必須 | レビュー数(例: 120) |
Reviewマークアップすべき主なプロパティ (@type: Review):
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
author | 必須 | レビュー投稿者、個人名(Person)または匿名(Anonymous)などで指定します。 |
datePublished | 必須 | レビュー投稿日(ISO 8601形式) |
name | 推奨 | レビューのタイトル |
description | 推奨 | レビュー本文 |
reviewRating | 必須 | 評価点 |
itemReviewed | 必須 | レビュー対象のアイテム |
パンくずリストは、サイト内でのユーザーの現在地を示し、ナビゲーションを容易にするためのものです。検索エンジン側に対しては、サイトの構造を理解させるのに役立ちます。
▼パンくずリストについて、より知りたい方についてはこちらもご一読ください。
パンくずリストとは?SEO効果を高める設定方法を解説
「BreadcrumbList」でマークアップすべき主なプロパティ (@type: BreadcrumbList):
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
itemListElement | 必須 | 各パンくず要素の配列 |
階層化されたプロパティの詳細
itemListElement (@type: ListItem)
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
position | 必須 | リスト内での順序(1から開始) |
item | 必須 | リンク先の詳細情報 |
実装方法(JSON-LD形式の例):
<s<script type=”application/ld+json”> { “@context”: “https://schema.org/”, “@type”: “BreadcrumbList”, “itemListElement”: [ { “@type”: “ListItem”, “position”: 1, “item”: { “@id”: “https://example.com/”, “name”: “ホーム” } }, { “@type”: “ListItem”, “position”: 2, “item”: { “@id”: “https://example.com/category/electronics”, “name”: “家電” } }, { “@type”: “ListItem”, “position”: 3, “item”: { “@id”: “https://example.com/products/earphones”, “name”: “ワイヤレスイヤホン” } } ] } </script> |
ECサイトでは、商品の使い方や購入方法、あるいはよくある質問に関する情報を提供することが、ユーザーの疑問解消や購入の後押しに繋がります。これらの情報を構造化データとしてマークアップすることで、検索結果に「リッチスニペット」として表示され、ユーザーの関心を引きやすくなります。
HowTo(ハウツー)の構造化データ(@type: HowTo):
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
name | 必須 | 手順全体のタイトル |
description | 推奨 | 手順の概要 |
“step”: [ { “@type”: “HowToStep”, “name”: “ステップ1”, “text”: “商品の開封方法について説明します。”, “image”: “https://example.com/images/howto-step1.jpg” }, { “@type”: “HowToStep”, “name”: “ステップ2”, “text”: “充電方法について説明します。”, “image”: “https://example.com/images/howto-step2.jpg” } ] |
FAQPage(よくある質問)の構造化データ(@type: FAQPage):
商品に関するFAQ(よくある質問)ページに適用し、質問と回答のペアをマークアップします。これにより、検索結果に質問と回答が直接表示される「リッチスニペット」として表示される可能性があります。
プロパティ名 | 必須・推奨 | 記述内容 |
mainEntity | 必須 | 質問と回答の配列 |
name | 必須 | 質問文 |
acceptedAnswer | 必須 | 回答の詳細情報 |
text | 必須 | 回答文 |
実装方法(JSON-LD形式の例):
<script type=”application/ld+json”> { “@context”: “https://schema.org/”, “@type”: “FAQPage”, “mainEntity”: [ { “@type”: “Question”, “name”: “このイヤホンの保証期間はどれくらいですか?”, “acceptedAnswer”: { “@type”: “Answer”, “text”: “当製品の保証期間は、ご購入日より1年間です。万が一、初期不良や故障が発生した場合は、お手数ですが弊社サポートまでお問い合わせください。” } }, { “@type”: “Question”, “name”: “ペアリング方法を教えてください。”, “acceptedAnswer”: { “@type”: “Answer”, “text”: “まず、イヤホン本体の電源をオンにし、スマートフォンのBluetooth設定画面を開いてください。検出されたデバイスリストから「TechAudioワイヤレスイヤホン」を選択し、ペアリングを完了してください。” } } ] } </script> |
構造化データを実装する際には、その効果を最大限に引き出し、検索エンジンからのペナルティを避けるために、いくつかの注意点とガイドラインを遵守する必要があります。
構造化データを実装する際は、Googleのガイドラインを遵守することが不可欠です。マークアップする情報は、ウェブページ上で実際に表示されている内容と一致させる必要があります。偽の情報や誤解を招くようなマークアップは厳禁です。
また、「Product」や「Review」といったスキーマタイプごとに、必須プロパティと推奨プロパティが定められています。リッチリザルトを適切に表示させるためにも、可能な限り関連するすべてのプロパティをマークアップしましょう。
最も重要なのは、構造化データがユーザーへの価値提供を目的としているという点です。検索エンジンを欺くためではなく、ユーザーがより多くの情報にアクセスできるよう、正確な情報を付与することを心がけましょう。最新のガイドラインは、Googleの公式ドキュメントで常に確認してください。
Googleの構造化データに関する公式ドキュメント(https://developers.google.com/search/docs/appearance/structured-data)
構造化データを実装した後、それが正しく機能しているかを確認するために、必ずテストと検証を行う必要があります。
これらのツールを定期的に使用し、実装した構造化データが正しく機能しているかを確認することが、SEO効果を維持・向上させる上で不可欠です。
構造化データは単体で効果を発揮するものではなく、既存のSEO対策と組み合わせることでその効果を最大化できます。
構造化データはコンテンツの内容を検索エンジンに伝えるための「ラベル」に過ぎません。まずはユーザーに価値ある高品質なコンテンツを提供することが不可欠です。商品名や説明文には、ターゲットとするキーワードを自然に含めましょう。
また、サイトのクロール性や表示速度など、基本的なテクニカルSEOが最適化されていることが前提となります。構造化データを実装しても、サイトの基盤が不安定であれば期待する効果は得られません。さらに、サイト内の適切な内部リンクや、優れたユーザーエクスペリエンス(UX)も重要です。構造化データでクリック率が向上しても、ランディングページが見づらければユーザーはすぐに離脱してしまいます。
これらの要素を総合的に改善することで、構造化データが真価を発揮し、ECサイトのSEO効果を最大化できます。
今回は構造化データについて、詳しい実装方法と共にご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
競争が激化するEC市場において、検索エンジンからの安定した集客はビジネス成長に不可欠です。本記事で解説したように、構造化データは検索エンジンにサイト情報を正確に伝え、検索結果での視認性を高める有効な手段となります。
「Product」や「Review」といった構造化データを活用することで、競合サイトとの差別化を図り、集客効果を最大化できます。今後もその重要性は増していくため、変化に柔軟に対応し、構造化データを活用したSEO対策を継続的に実施していきましょう。