台湾における消費行動は、近年ネットを舞台に急速に変化しています。特に「網紅(インフルエンサー)マーケティング」と「ライブコマース(ライブ配信による販売)」は、食品や日用品を中心に着実に浸透しており、消費市場の新たなフロンティアとされています。台湾の消費者研究機関・東方線上(EOL)が実施した最新調査によれば、この成長を牽引する中心的な存在は30〜39歳の女性層であることが明らかになりました。
台湾消費者研究を行う東方線上の調査によれば、過去1年以内にインフルエンサーの団購(共同購入)に参加した人は24.7%、広告タイアップ商品を購入した人は14.5%、ライブ配信で購入した人は10.4%でした。その中で特に女性、なかでも30〜39歳の参加率が最も高いことが特徴です。
この世代は家庭と仕事の両面を担うことが多く、「効率的で便利な買い物手段」を強く求めています。また、一定の可処分所得を持ち、オンライン消費に慣れているため、新しい販売スタイルを受け入れやすいのも理由の一つです。
購入品目としては食品や飲料が圧倒的に人気です。信頼できるブランドや日常的に消費する商品であれば、ライブ配信を通じて購入する心理的ハードルは低くなります。加えて、美容・スキンケア商品、アパレル、生活雑貨もこの世代女性に支持され、実用性と効果の「見える化」が購買意欲を刺激しています。
ライブコマースの購買動機として最も大きいのは「限時促銷(タイムセール)」です。価格的なお得感が即時の購入を後押しします。一方で、多くの消費者は「商品の品質保証」や「ライブ配信内容の信憑性」に不安を感じています。特に女性消費者は「実際に効果が見えるか」「配信者の説明が誠実か」に敏感であり、ライブ主の専門性・親しみやすさ・透明性が購買意欲を左右します。
ライブコマースでの1回あたり購入金額は1,000〜1,999元(約4,800円〜9,600円)が最も多く、特に男性よりも女性の平均消費額が高い傾向が見られます。視聴プラットフォームでは「蝦皮(Shopee)」が圧倒的なシェアを持ち、FacebookやYouTubeを大きく上回る存在感を示しています。
市場拡大のカギを握るのは、やはり「信頼」の確立です。商品の品質保証や返品制度の整備、さらには誇張表現を避けた誠実な配信スタイルが求められます。30〜39歳女性は消費力が強いだけでなく、購買において「家族全体の生活を左右する意思決定層」でもあります。彼女たちの支持を得られるかどうかが、台湾ライブコマースの持続的な成長を決定づけるでしょう。
台湾のライブコマースは、若年層ではなく30〜39歳女性が主役です。時間や生活の制約を抱えつつも購買意欲が高く、合理性と信頼性を重視するこの世代に向けた戦略が、今後の成功の分かれ目となるといえます。