中国におけるウイスキー消費は近年急速に拡大していますが、依然として市場シェアは2%未満と限定的で、白酒(98%)(バイジウ / bái jiǔ 中国の蒸留酒)が圧倒的な地位を占めています。しかし、モルガン・スタンレーの予測によると、2030年までに中国のウイスキー市場は150億ドル(最新レートで約2兆2,461億円)規模に達する可能性があり、大きな成長が期待されています。
ウイスキーの消費拡大の主な要因は、若年層の需要増加です。34歳以下の都市部の若者が消費者の50%以上を占め、特にZ世代(1995年~2009年生まれ)の割合が高く、47%を占めています。また、高級価格帯(1,200元、24,840円以上)では女性の購買率が男性を上回る傾向が見られます。
さらに、ウイスキーの消費者は高学歴・高収入層が中心で、本科(学士号(大学卒))以上の学歴を持つ人が60%、月収9,000元(184,500円)以上の層が50%以上を占めています。
ウイスキーの飲用シーンは多様化しており、バーやクラブだけでなく、家庭での自宅飲みや友人とのホームパーティーなどカジュアルな場でも楽しまれています。調査によると、消費者の96%が自宅飲みを目的としてウイスキーを購入しており、その動機として「リラックス」「個人的な趣味」「社交目的」などが挙げられます。
また、シングルモルトウイスキーへの関心が高まり、2022年には京東(JD.com)でのウイスキー販売額が前年比48%増加。特に200~800元(4,140円~16,560円)の価格帯の製品が7~8%の伸びを見せています。
購買の主流はオンラインで、天猫(Tmall)、京東、抖音(Douyin)などのECプラットフォームが40~76%を占めます。特に抖音は2023年にウイスキー販売が倍増し、趣味嗜好に基づく「興味EC」の強さを示しました。オフラインでは、大型スーパー(51%)、輸入スーパー(51%)、酒類専門店(48%)、免税店(42%)が主要チャネルですが、コンビニエンスストアはわずか2%と低いです。
中国市場では、スコットランド、日本、アメリカのウイスキーが特に人気を集めています。
これらのブランドは特にシングルモルトやブレンデッドウイスキーのカテゴリで人気があり、ECサイトや高級バーでの取扱いが多く見られます。
ウイスキー市場の拡大とともに、中国国内のウイスキー生産も活発化しています。帝亞吉欧(Diageo、雲南省)や保樂力加(Pernod Ricard、峨眉山)などの国際メーカーが相次いで蒸留所を建設しているほか、瀘州や蒙泰などの地元ブランドも生産を開始し、徐々に国内生産体制が整っています。
しかし、中国産ウイスキーはまだ発展途上であり、品質やブランド認知度の面で輸入品に及ばないのが現状です。200~300元(4,136円~6,204円)の中価格帯の商品が主流で、高級市場は依然としてスコットランドや日本の輸入品に依存しています。2023年8月には、中国政府が「烈性酒品質基準(ウイスキー編)」の草案を発表し、規制の整備が進められています。
中国のウイスキー消費は急成長中ですが、依然としてニッチ市場です。若年層や高学歴・高収入層、多様な消費シーン、品質とコストパフォーマンスへの需要が成長を牽引しています。国産ウイスキーの発展と業界標準化も浸透率向上に寄与するでしょう。しかし、消費文化の成熟度不足、飲食や宴会といった特定の利用シーンの開拓が不十分であることも、今後の課題です。中国市場の巨大な潜在力を考えると、ウイスキーは今後さらなる飛躍が期待されます。
【参考情報】
※ 百度検索 | 2021中国威士忌年度白皮书 (2021年 中国ウイスキー年間白書)
※ 百度検索 | 2023年百瓶威士忌用户行为调研报告(2023年 百瓶ウイスキー ユーザー行動調査報告)
※ 百度検索 | 京东酒水消费趋势报告(京東 酒類消費トレンドレポート)
※ 百度検索 | 最受欢迎的威士忌(最も人気のあるウイスキー)
※ 百度検索 | 威士忌在中国市场的趋势(中国市場におけるウイスキーのトレンド)
※ 中国酒业协会(中国酒類協会)