中国をはじめとするG20内新興市場国(以降、新興市場国)の経済成長の世界経済への波及は、過去20年間で増大しています。貿易を通して新興市場国が世界のGDPへ与える影響は、2000年以降の約20年間で3倍に増えています。影響は、中国によるものが最大で、中国以外の新興市場国の合計や米国と匹敵する水準となっています。ただし、インド、ブラジル、メキシコ、ロシアといった中国以外の新興市場国も、近隣諸国経済へ大きな影響を及ぼしています。下図は、新興市場国において、マイナス2.5%のTFP(全要素生産性)ショック*がおきた場合、(新興市場国を除く)世界GDPへ及ぼす影響をシミュレーションした図で、例えば、2018年に中国でTFPショックが起きた場合は、(新興市場国を除く)世界GDPを約0.08%押し下げるシミュレーション結果となっています。白丸は米国でTFPショックが起きた際に同じシミュレーションを実行した場合の影響を表しており、2000年より2018年のほうが、米国の世界GDPへ与える影響は減っています。
新興市場国は、世界貿易において、特に製造業と鉱山業で重要な役割を果たしており、他国の企業や産業の需要と供給に応じて、大きな影響力を持っています。
2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟して以来、世界貿易や外国直接投資(FDI)に占める新興市場国のシェアは倍増し、現在では世界のGDPの3分の1を占めています。これらの国々は、特に製造業や鉱業における中間財の主要な輸出国であると同時に、最終財の主要な輸入国となりました。
中国をはじめとする主要新興市場国の成長見通しが弱まっていることを受け、景気減速による影響が、世界経済の中でどのように伝播し得るのか理解しておくことは、新興市場国だけでなく、その影響を受ける可能性のある国にとっても極めて重要です。
*TFP(全要素生産性)ショックとは、経済全体の生産性に影響を与える予期しない変動のことを指します。具体的には、技術革新や労働力の質の変化、資本の効率性の向上などが原因で生じることがあります。TFPショックは、経済成長や生産性の向上に大きな影響を与えます。
【出典元】
※1 Emerging Markets Are Exercising Greater Global Sway | IMF