2025年の中華圏における七夕(農暦七月七日)は8月29日(金)にあたります。日本でも馴染みのある星伝説の日ですが、中華圏では由来や過ごし方が少し異なります。本来は「乞巧(きこう)」と呼ばれる行事で、織女に針仕事や手芸の上達、良縁を祈る日でした。現在では恋人同士の「中国版バレンタイン」としても広く認知され、贈り物やイベントの需要が高まる重要な商戦期になっています。
中国本土では、七夕はECと即時配送が最も活発化する日です。中国最大級の生活サービスプラットフォーム「美団(Meituan)」のデータによれば、2024年七夕当日の即時注文は1,600万件を超え、特に花束やスイーツの「ラスト1時間需要」が急増しました。ジュエリー・ゴールドの限定商品、ハイブランドの七夕コレクションも定番化しており、抖音(TikTok中国版)や小紅書(RED・中国版Instagram的な位置づけの口コミ型SNS)での「開箱動画(開封動画)」や「同城配送ライブ(同じ都市内でのサプライズ配送)」が購買を後押しします。さらに、「国風(中華伝統風)」を取り入れたワークショップや非遺(無形文化遺産)テーマの販促が好評で、恋人向けだけでなく友人や自分へのご褒美需要も掘り起こしています。
台湾では、台北の「大稻埕情人節」など、七夕前後に合わせた花火大会やナイトマーケットが大きな集客力を誇ります。セブンイレブンや全家(ファミリーマート)では、七夕限定スイーツや花ギフトの予約販売、ペア割引キャンペーンを実施。加えて、台北霞海城隍廟での「月下老人(縁結びの神)」参拝が若者の間で人気で、ここを起点にしたコラボ御守や「縁結びセット」も登場しています。2025年は七夕が「鬼月」期間に重なるため、「結婚」など直接的な表現を避け、「平安祈願」「縁を結ぶ」などのソフトな訴求が推奨されます。
香港では七夕は「七姐誕(七仙女の誕生日)」として祝われます。手工芸や化粧品を供える「乞巧」儀式が今も続き、特に坪洲の仙姊廟や黄大仙祠などが有名です。地元の女性たちは供物や飾りを手作りし、「器用さ」や「家庭円満」を祈ります。
商業施設やホテルでは、刺繍、団扇づくり、中華菓子作りなど伝統工芸体験をテーマにしたワークショップを開催し、恋愛よりも「技を磨く」ことや「文化を継承する」ことを前面に出しています。観光客向けには祈願スポットを巡るスタンプラリーや、地元グルメとのセット企画なども人気です。
同じ「七夕」でも、地域ごとの文化的背景や商習慣は大きく異なります。現地の価値観や習慣を尊重し、生活動線と感情に響くアプローチを取ることが、商戦期を成功に導く鍵となります。