Google広告「世帯収入ターゲティング」とは？設定方法から効果的な活用法まで解説

デジタルマーケティングにおいて、ターゲット顧客への的確なアプローチは、成果を左右する重要な要素です。多くの企業が活用するGoogle広告には、広告のパフォーマンス向上を目的とした多様なターゲティング機能が備わっています。その中で、特定の所得層に広告を配信できる「世帯収入ターゲティング」は、取り扱う商材やサービスに応じて有効な選択肢となり得ます。

本コラムでは、Google広告の「世帯収入ターゲティング」に関する基本情報、推定の仕組み、設定手順、活用する上での利点と留意点、そして具体的な活用例について解説します。

1. Google広告の世帯収入ターゲティングとは？

世帯収入ターゲティングは、広告主が対象とするユーザーの推定される世帯収入に基づいて広告配信を調整できる機能です。Googleは、郵便番号などの地域ごとの平均所得データや、ユーザーのオンライン上での行動（閲覧サイト、検索キーワードなど）といった複数のシグナルを基に、ユーザーの世帯収入を推定します。

広告主は、この推定に基づいて、「上位10%」「11～20%」「21～30%」「31～40%」「41～50%」「下位50%」、そしてGoogleが世帯年収（収入）を特定できなかった「不明」といった区分でユーザーを選択し、広告配信を調整することが可能です。（※これらの階層区分や名称は、提供状況により変更される場合があります。）

この機能を用いることで、例えば高価格帯の商品やサービスを展開している企業は、購買力が相対的に高いと考えられる層へ重点的に広告を届けることや、特定の収入層に特化した商品・サービスの訴求が可能になります。

留意事項

• 推定に基づくデータ
  Googleが提供する世帯収入データは、個人の正確な収入を示すものではなく、複数のデータに基づいた「推定値」です。そのため、100%の精度を持つものではありません。
• 利用可能な国・地域
  世帯収入ターゲティングの提供は、国や地域によって異なります。日本国内では利用可能ですが、海外向けの広告配信を検討する際は、対象国での提供状況を事前に確認する必要があります。

2. Google広告の世帯収入ターゲティングの仕組み（推定方法）

Googleは、ユーザーのプライバシー保護に配慮しつつ、広告の関連性を高めるため、以下のような情報を活用して世帯収入を推定していると考えられます。

• 地域データ
  ユーザーが居住している、または関心を示している地域の平均所得データ（公的統計データなどに基づく）。
• オンライン行動
  • 検索履歴
    高級ブランド、投資関連のキーワード、特定の高価格帯製品など、収入レベルを示唆する可能性のある検索語句。
  • 閲覧サイト
    富裕層向けメディア、高級品ECサイト、金融情報サイトなど、特定のライフスタイルや興味関心を示すウェブサイトの閲覧傾向。
  • YouTube視聴コンテンツ
    視聴している動画のジャンルや内容。
• Googleサービス上の情報
  Googleアカウントに登録された情報（年齢、性別など）と、上記の行動データを組み合わせることで、推定の精度向上を図っています。

これらの情報が複合的に分析され、ユーザーは世帯収入の階層（例：上位10%、11～20%、21～30%など）に分類されます。広告主は、この分類に基づいてターゲットとする層を選択します。

3. Google広告の世帯収入ターゲティングを活用するメリット

世帯収入ターゲティングの活用により、以下のような利点が期待できます。

1. 購買力が高い層への効率的なアプローチ
   高級車、ブランド品、不動産、高額な旅行プラン、専門的なコンサルティングサービスなど、比較的高価格帯の商材では、購買力が高いと考えられる上位の所得層にターゲットを絞ることで、広告費用対効果の改善が期待されます。
2. 特定の収入層に適した訴求
   例えば、節約志向の層に向けたサービスや、特定の収入層をターゲットとした金融商品など、それぞれの所得層のニーズに合わせたメッセージや広告クリエイティブを用いることで、クリック率やコンバージョン率の向上が見込めます。
3. 広告配信の効率化
   自社の製品やサービスを購入する可能性が低い所得層への広告表示を抑制することで、無駄なクリックやインプレッションを減らし、広告予算をより効果的に配分することが可能です。
4. 他のターゲティングとの組み合わせによる精度向上
   年齢、性別、興味関心、地域といった他のターゲティングオプションと組み合わせることで、より詳細かつ精度の高いターゲティングが実現できます。「都心部に居住する30代男性で、世帯収入が上位10%の層」といった具体的なユーザー像へのアプローチも可能です。

4. Google広告の世帯収入ターゲティングの設定方法

世帯収入ターゲティングは、Google広告の管理画面から設定できます。主に検索キャンペーン、ディスプレイキャンペーン、動画キャンペーンなどで利用可能です。

設定手順の概要（キャンペーンの種類により画面構成が若干異なる場合があります）

1. Google広告アカウントにログインします。
2. 対象のキャンペーンまたは広告グループを選択します。
3. 左側のメニューから「オーディエンス、キーワード、コンテンツ」内の「オーディエンス」を選択します。
   • 新規の広告グループの場合、オーディエンスターゲティングの設定画面が表示されます。
   • 既存の広告グループの場合、「オーディエンスセグメントを編集」などの項目をクリックします。
4. 「ユーザー属性」または「詳しいユーザー属性」のセクションを確認します。
   • この中に「世帯収入」の選択肢があります。
5. ターゲットとする世帯収入の階層を選択します。
   • 一般的に「上位10%」「11～20%」「21～30%」「31～40%」「41～50%」「下位50%」「不明」といった選択肢が提供されます。（※表示される階層や名称は変更されることがあります。）
   • 「不明」は、Googleが世帯収入を推定できなかったユーザー層です。この層を除外するか含めるかは、広告戦略に基づいて判断します。
6. 「保存」をクリックして設定を完了します。

設定時の考慮点

• 「ターゲティング」と「モニタリング」の選択:
  • ターゲティング
    選択した世帯収入層にのみ広告を配信します。リーチは限定されますが、より対象を絞り込めます。
  • モニタリング
    選択した世帯収入層のパフォーマンスを監視し、入札単価調整などに活用します。広告は全てのユーザーに配信される可能性があります。 目的に応じた選択が重要です。
• 除外設定の活用
  特定の収入層を除外することも可能です。例えば、高価格帯の商材で、購買に至る可能性が低いと考えられる下位の収入層を除外するなどの活用が考えられます。

5. Googleの世帯収入ターゲティングの注意点とデメリット

世帯収入ターゲティングには多くの利点がありますが、利用に際しては以下の点に留意が必要です。

1. 推定データであることの認識
   繰り返しになりますが、データは推定値であり、実際の個人の収入と一致しない場合があります。この点を理解し、他のターゲティングや効果測定データと合わせて総合的に判断することが求められます。
2. リーチ数の変動
   ターゲットを特定の収入層に限定するため、広告の配信対象となるユーザー数は減少する傾向にあります。特にニッチな商材やサービスの場合、十分なリーチを確保できない可能性も考慮し、他のターゲティングとのバランスを検討する必要があります。
3. プライバシーへの配慮
   世帯収入はプライバシーに関わる情報です。広告クリエイティブやランディングページの内容が、特定の収入層に対して不快感を与えたり、差別的と解釈されたりしないよう、慎重な表現を心がける必要があります。Googleの広告ポリシーの遵守も不可欠です。
4. 商材との適合性
   商材やサービスの特性によっては、世帯収入が購買の主要な決定要因とならないケースも存在します。例えば、日用品や比較的安価な趣味の製品などは、収入層による購買行動の差が出にくい場合があります。
5. 「不明」ユーザー層の取り扱い
   Googleが世帯収入を推定できなかった「不明」のユーザー層は、一定の割合を占めることがあります。この層を安易に除外すると、潜在的な顧客を逃す可能性もあるため、パフォーマンスを検証しながら慎重に取り扱いを決定することが推奨されます。

6. 効果的な活用シーンとポイント

世帯収入ターゲティングを効果的に活用できると考えられるシーンと、その際のポイントを以下に示します。

高価格帯商材・サービス

例
高級ブランド品、高級車、注文住宅、富裕層向け金融商品、高額なエステティックサービスや旅行パッケージなど。

ポイント
上位の所得層（例：上位10%、11-20%）にターゲットを絞り込み、品質の高さや専門性を訴求する広告クリエイティブを展開します。

特定のライフスタイルに関連する商材・サービス

例:
海外留学プログラム、早期リタイアメント層向けコンサルティング、特定の趣味（ゴルフ、ワイン収集など）に関連する高額商品。

ポイント
世帯収入に加えて、年齢、興味関心といったデモグラフィック情報を組み合わせることで、より精密なターゲティングが可能です。

BtoBサービス

例
企業の役職者や決裁権を持つ個人をターゲットとする場合、彼らの個人としての世帯収入が高い傾向にあるという仮説に基づき、間接的な指標として活用を検討できます。

ポイント
職種や業種ターゲティングと組み合わせ、テスト的に導入し効果を検証することが考えられます。

地域戦略との連携

例
高級住宅街や所得水準の高い地域に実店舗を持つビジネス。

ポイント
地域ターゲティングで特定のエリアを設定し、さらにそのエリア内で上位の所得層に絞り込むことで、来店促進効果の向上が期待できる場合があります。

7. 効果測定と継続的な最適化

設定後の効果測定は不可欠です。各収入層ごとのクリック率、コンバージョン率、顧客獲得単価（CPA）などを比較分析し、入札単価の調整やターゲット層の見直しを継続的に行うことが重要です。A/Bテストの実施も有効な手段です。

8. まとめ

Google広告の「世帯収入ターゲティング」は、広告主が購買力のある、あるいは特定のニーズを持つ可能性の高い顧客層へ、より効率的にアプローチするための有効な機能の一つです。その仕組み、利点、そして留意点を理解し、自社の商材やマーケティング戦略に応じて適切に活用することで、広告パフォーマンスの向上が期待されます。

ただし、推定データであるという特性、リーチが限定される可能性、プライバシーへの配慮などを常に意識し、他のターゲティング手法や効果測定データと組み合わせながら、戦略的に運用していくことが求められます。

【参考】
Google広告ヘルプ：年齢や性別によるターゲティングについて