近年、中国の高等教育は大きく変化を遂げています。大学進学率は着実に上昇し、進学ルートも多様化しています。本コラムでは、2024年時点の中国における大学進学率や高考(全国大学統一入試)の最新データ、「211」「985」「双一流」といった大学制度について、具体的な統計とともに概観します。
中国教育部の発表によると、2022年時点における高等教育の毛入学率は59.6%に達し、前年から1.8ポイント上昇しました。2023年には、この割合が60.2%にまで上昇しています。
※毛入学率とは、大学・短期大学・専門職大学などに在籍するすべての学生(年齢を問わず)の数を、大学進学年齢にあたる人口(主に18〜22歳)で割った比率を指します。
これはユネスコが定める「高等教育普及化(入学率50%以上)」の基準を大きく上回っており、教育の大衆化が進んでいることを示しています。
また、中等職業学校(中職)の卒業生についても、2022年には約70%が高等教育機関への進学を選択しています。対口単招(職業教育専用の入試)や高職拡招(高等職業学校の拡大)などの制度改革により、職業教育からの進学ルートが確立されつつあります。
なお、北京・上海などの経済発展地域ではこの割合が70%を超える一方、中西部の一部省ではまだ50〜60%台にとどまっており、地域格差も課題とされています。
2024年の全国高考受験者数は過去最多の1342万人に達しました。うち、本科(4年制大学)と専科(日本の短大や専門学校に相当)(2〜3年制の短期大学や高等職業教育課程)を合わせた総合格者数はおよそ1050万〜1070万人と推定され、合格率は78〜80%となる見込みです。
2024年は職業教育改革の進展が目立ちました。「職教本科」の試行や、職業教育の一貫進学制度(中職〜高職〜職教本科をシームレスに進学できるルート)などの取り組みにより、中職卒業生の進学率は75%を超えると見込まれています。なお、新たに約30の職業本科大学が追加認定され、専攻分化と専門性強化が進められています。
※職教本科とは、職業教育ルートによる学士課程。従来の職業教育に大学レベルの学位取得を加えた新制度です。
中国では大学のレベルや国の支援状況を表すため、「211工程」「985工程」「双一流建設」といったラベルがよく使われます。
例えば、深圳大学のように211や985には該当しないものの、特定学科で双一流に選ばれている大学も存在します。一方で、旧来の211・985大学であっても双一流からは外される場合もあるため、これまで以上に大学・学科ごとの特色が重視される時代になりつつあります。
中国の高等教育は、量的な拡大(高進学率・高等教育の普及)に加え、質的転換(職業教育の強化・大学評価制度の刷新)も同時に進行しています。今後も政策動向や制度改革の行方に注目が集まるとともに、中国社会における教育への関心と投資意欲は依然として非常に高く、子どもの教育に対する家庭の熱意は都市部・農村部を問わず広く根付いています。進学を巡る競争は年々激化し、家族全体で子どもの将来にかける姿勢が教育制度の発展を後押ししています。