台湾では近年、社会構造が大きく変化しています。2023年の合計特殊出生率(TFR)は0.87と世界最低水準に落ち込み、新生児数はわずか13.55万人(内政部発表)。一方で、ペットの登録数は約279万匹(犬148万匹、猫131万匹)と、新生児数を大幅に上回りました。若者の価値観が変化し、「結婚せず、子どもを持たず、自由に生きる」傾向が強まる中、ペットが家族の一員としての地位を確立しています。
ペット市場は急拡大しており、台湾経済研究院(TIER)によると2023年の市場規模は631億台湾ドル(約2730億円)に達し、2024年には690億台湾ドル、2025年には750億台湾ドルを超える見込みです。市場の約50%がペットフード、30%が医療・ヘルスケア、20%が美容・玩具などが占めており、特に機能性フードや医療関連の需要が拡大。2024年の《台灣寵物市場行銷趨勢論壇》では、犬のドライフードが9%増、猫の玩具が23%増と報告され、飼い主の消費意識が高まっていることが示されました。
ペット文化は若者のライフスタイルにも浸透しています。『哈寵誌』の調査では、犬の月平均消費額が2085台湾ドル(約9000円)、猫が2179台湾ドル(約9400円)と猫の消費額が初めて犬を上回りました。飼い主の中心は21~35歳の女性で、ネット通販を活用し、栄養価の高いフードを選ぶ傾向が強まっています。また、約3割の若者がペットを感情的な支えと位置づけ、ストレス解消や生活の質の向上に寄与していることが明らかになりました。
ペットは単なる伴侶を超え、社交の場でも存在感を増しています。2024年、台北と高雄のペットカフェは200軒を超え、月間10万人以上が訪れます。2025年初頭の「台北ペット展」では5万人が来場し、スマートフィーダーや監視カメラの売上が前年比50%増を記録。論壇では高端訓会長が、サブスクモデル(例: BARK BOX)やデータ活用がコミュニティ形成と業績成長を促進すると強調しました。ペットを通じた新たな社会の絆が生まれています。
一方、ペット産業は新職業も創出。ペット葬儀師や行動トレーナーが注目され、年収200万台湾ドル以上を稼ぐ人もいます。また、台湾最大の動物用医薬品メーカー【永鴻国際生技】とバイオテクノロジー革新企業【宝泰生医】は2024年に提携を発表し、ペットのがんや心臓病治療薬開発を進め、市場規模5000億米ドル(約75兆円)のグローバル市場を狙います。
ペット文化の隆盛は、少子高齢化(65歳以上が人口の20%超)や女性の社会進出(女性飼い主が55%)を反映しています。ペット保険市場も拡大し、2024年の保険料収入は1.29億台湾ドル(約5.6億円)に達しました。国泰産険(台湾大手保険会社)などは、ペット市場の成長を見込み、デジタル化や獣医師との連携を強化しています。
一方で、ペットの遺棄や環境負荷への懸念も高まり、2025年には動物保護団体が「責任ある飼育」を呼びかける予定です。社会の変化を映し出すペット文化は、今後も進化を続け、台湾の未来を示唆する重要な要素となるでしょう。
【参考情報】
※ 毛小孩用藥商機夯!永鴻生技、寶泰生醫攜手搶攻5000億美元寵物市場 | YAHOO!股市
※ 平均4戶有1戶養寵物! 台灣少子化「貓狗比新生兒多10萬」 | 中廣新聞網
※ 寵物險 去年賠率降、終結虧損 – A7 金融市場 | 工商時報
※ 搶攻千億美元寵物市場!永鴻攜手寶泰開發寵物癌症、創新抗體藥物 | TechNews 科技新報
※ 2024第九屆台灣寵物市場行銷趨勢論壇 | HotPets 哈寵誌
※ 寵物訓練師薪水揭秘:高薪攻略與職業發展指南 | 狗東西