近年、日本を訪れる外国人観光客が急増する中、旅行中の医療対応に対する関心も高まっています。特に最近、中華圏では、訪日中の体調不良や緊急時の医療体制に関心を寄せる声が多く、日本での医療アクセスや受診のしやすさが注目されています。
日本のインバウンド市場は、コロナ禍を経て急速に回復しており、台湾や中国、香港などの中華圏からの観光客は訪日旅行の大きな割合を占めています。2023年には台湾からの訪日観光客が約480万人に達し、中華圏全体で日本観光の重要市場となっています。このような背景の中で、外国人観光客が安心して日本を訪れるための医療対応の充実は、日本の観光業界にとって今後ますます重要な課題となるでしょう。
日本の医療制度は世界的にも質が高く評価されていますが、外国人観光客がスムーズに利用できるかという視点では、まだ課題が多いのが現実です。特に以下の点がインバウンド市場におけるリスクとなっています。
日本では「分級診療制度」を採用しており、通常は小規模クリニック(診療所)での診察が先となり、大病院での診療には紹介状が必要となります。
しかし、外国人観光客は日本の医療制度に慣れていないため、直接大病院を訪れて診察を断られるケースも少なくありません。
また、急患の場合でも、受け入れ先の病院がなかなか見つからず、対応が遅れる可能性もあります
多くの医療機関では英語すら通じにくく、中国語対応可能な病院はさらに少ないのが現状です。
日本政府観光局(JNTO)や厚生労働省が外国人対応可能な医療機関リストを提供していますが、情報が十分に行き届いておらず、観光客自身が事前に把握していないケースも多くあります。
また、医療通訳サービスの提供が限られているため、言語の壁によって適切な診療が受けられないリスクも指摘されています。
日本では外国人観光客が日本の公的健康保険に加入できないため、診療費は全額自己負担となります。
救急搬送や入院が必要な場合、数十万円~100万円以上の費用がかかる可能性もあるため、旅行保険の加入が不可欠です。
しかし、訪日観光客の中には適切な保険に加入せずに来日し、高額な医療費に直面するケースも報告されています。
日本のインバウンド市場をさらに発展させるためには、「安心して旅行できる環境づくり」が不可欠です。特に医療面での安心感を提供することは、観光業全体の競争力を高めることにつながります。
外国人観光客向けの「訪日医療ガイド」の整備
観光庁・JNTO・厚生労働省などが連携し、外国人が「病気になったらどうすればいいか」を簡単に理解できるガイドを提供。
ホテル・空港・観光案内所での医療情報提供の強化
主要都市だけでなく、地方の観光地でも外国人対応可能な病院リストや緊急時の連絡先を配布。
訪日観光客に対する旅行保険の義務化の検討(または推奨)。
キャッシュレス診療(Cashless Medical Service)の拡充
外国人観光客向けに提携病院での保険適用によるキャッシュレス診療を推進。
医療機関での通訳支援の拡大(オンライン通訳・AI翻訳アプリの導入)。
外国人診療の受け入れ体制を持つ病院の拡充と認知度向上。
「JMIP(外国人患者受入れ医療機関認証)」を取得した病院のリストをより広く周知する。
日本のインバウンド市場は今後も成長が期待されますが、その発展には観光客が「安心して訪日できる環境づくり」が不可欠です。特に医療対応は、訪日リピーターを増やすためにも重要な要素となります。
「病気になったらどうしよう」ではなく、「日本なら安心」と思える仕組みづくりを進めることが、日本の観光業の競争力をさらに高めるカギとなるでしょう。
【出典】
※ 日本旅遊生病怎麼辦?看病流程、費用、保險理賠一次懂,官方建議再加1保險 | 康健雜誌