通常の検索流入とは異なるロジックを持つGoogle Discover(ディスカバー)。本章はDiscoverからのトラフィックを最大化するための、具体的なコンテンツ戦略とサイト技術要件を専門的に解説していきます。記事をDiscoverに「表示させる手順」と「流入を安定させる戦略」を理解し、潜在顧客層への新たなリーチを実現する方法を探っていきましょう。
1.Google Discoverとは?表示させる方法と流入を増やすコンテンツ戦略
1-2.検索SEOとは一線を画す「Discover流入」の可能性
2.Google Discoverの表示メカニズムと評価指標
2-1. パーソナライズの仕組み:ユーザーの興味関心と行動履歴
2-2. Discoverが評価する「質の高いコンテンツ」の定義
3-2. クリック率(CTR)を最大化するクリエイティブ戦略
3-3. Discover流入後のエンゲージメントを高める記事構成
4-1. Core Web Vitalsとモバイルフレンドリーの徹底
4-2. AMP(Accelerated Mobile Pages)の役割と現状の立ち位置
4-4. Googleパブリッシャーセンターへの登録と権威性の確立
Google Discover(ディスカバー)とは、ユーザーの興味関心や行動履歴に基づき、検索することなくパーソナライズされた記事を自動で配信するGoogleの機能です。この機能は、2016年末に「Google Feed」として開始され、2018年9月に現在の名称に改名されました。
直近では、従来の即時性の高いニュース記事に加え、数ヶ月から数年前に公開された古い記事も、ユーザーの関心が高まったタイミングで再表示されるなど、配信されるコンテンツの幅が拡大する傾向が見られ、Webサイト運営者にとって無視できない新たなトラフィックチャネルとなっています。
Webサイトへのトラフィック獲得において、長らく検索エンジン最適化(SEO)が主要な戦略であり続けてきました。しかし、近年、Google Discoverを経由した流入が、従来の検索流入では達成し得なかった爆発的なトラフィックを生み出す機会を提供しています。
通常の検索流入は、ユーザーが顕在化されたニーズに基づき、特定のキーワードを用いて情報を「探しに来る」プル型のアプローチです。
これに対し、Google Discoverからの流入は、ユーザーが情報を「求めていない」状況で、Googleが潜在的な興味関心や行動履歴に基づいて記事を「届ける」プッシュ型のアプローチです。
この違いは、コンテンツ戦略の根本的な見直しを迫ります。Discoverからの流入を成功させることは、検索市場の枠を超え、潜在顧客層への新たなリーチを可能にする、事業インパクトの大きな戦略となり得ます。
Google Discoverで表示される記事はどのように判断されるのでしょうか。記事が表示されるための基本的な仕組みと、Googleがコンテンツを評価する基準について解説します。
Google Discoverの核心は、高度にパーソナライズされたフィードにあります。コンテンツがユーザーに表示されるかどうかは、以下の要素に基づいて決定されます。
・ウェブとアプリのアクティビティ:Google検索履歴、YouTube視聴履歴、利用したアプリの情報。
・デバイス情報:スマートフォンの機種、設定、利用パターン。
・位置情報:ユーザーの現在地や、過去に訪れた場所。
・トピックのフォロー:ユーザーが明示的に「フォロー」したトピックやエンティティ。
Google Discoverは、これらの膨大なデータを機械学習アルゴリズムで分析し、ユーザーが「次に興味を持つであろう」コンテンツを予測して配信します。このため、コンテンツは特定のキーワードへの最適化よりも、トピック(エンティティ)や文脈との関連性が重要となります。
Google Discoverにおいて、Googleが掲げるコンテンツの品質基準は、通常の検索結果以上に厳格である傾向があります。特に、E-E-A-T(Experience, Expertise, Authoritativeness, Trustworthiness:経験、専門性、権威性、信頼性)の概念が極めて重要です。
Google Discoverは、ユーザーが能動的に情報を探しに来たわけではないため、信頼性に欠ける情報や誤情報を表示することに対して、Googleは慎重です。そのため、記事や情報源の信頼性(Trustworthiness)が強く求められます。
・専門性(Expertise):特定のトピックにおける深い知識やスキル。
・権威性(Authoritativeness):業界内での評価や認知度。
・信頼性(Trustworthiness):情報源、著者、サイトの透明性と正確性。
・経験(Experience):トピックに関する実体験や一次情報。
特に金融や医療など、人々の生活に重大な影響を及ぼすYMYL(Your Money or Your Life)トピックにおいては、E-E-A-Tの基準が極めて高くなります。
▼YMYLについてより詳しく知りたい方はこちらの記事もご参照ください。
YMYLとは? Googleが重要視する理由
Google Discoverへの記事表示は、単にインデックスされること以上のロジックに基づいています。表示された後のユーザーの行動が、その記事が今後も多くのユーザーに配信されるかどうかの重要な指標となります。
・クリック率(CTR):
記事のタイトルと画像が、パーソナライズされたユーザーフィードの中でどれだけ注目を集め、クリックされたかを示す指標です。CTRが高いコンテンツは、より多くのユーザーの関心に合致していると判断され、配信が拡大されます。
・記事エンゲージメント(滞在時間、スクロール率など):
クリック後にユーザーが記事をどれだけ深く読み進めたかを示す指標です。滞在時間の長さや高いスクロール率は、コンテンツの質が高いと評価され、Googleの配信ロジックにおいて有利に働きます。
Discoverは、これらの指標を総合的に判断し、コンテンツの「興味関心への適合度」を評価します。
Google Discoverで流入を増やすためには、検索SEOのようにキーワードありきではなく、ユーザーの潜在的な興味関心を喚起するコンテンツを設計する必要があります。
Google Discoverは、ユーザーが「検索していない」情報を届けるため、トピック選定においては以下の原則が重要です。
・速報性・トレンド性の高い時事ネタ:
現在進行形で世間の関心が高いニュースやトレンド、季節性のトピックは、短期間で爆発的なトラフィックを生む可能性を秘めています。
・普遍的な共感性・関心:
長期的に人々の悩み、喜び、発見といった感情に訴えかけるテーマ。特定の業界知識や最新技術だけでなく、生活、健康、キャリアなど、多くの人々に関連するトピックです。
・トピッククラスターと記事の深度(網羅性):
単発の記事ではなく、関連する複数の記事(トピッククラスター)を提供することで、サイト全体の専門性と権威性を高めます。Discoverは、一つの記事だけでなく、そのサイト全体の信頼性を評価します。
フィード上でユーザーの目に留まり、クリックを誘発するタイトルと画像の最適化は、Google Discover対策における最重要課題です。
・タイトル:好奇心と感情を刺激する表現
検索キーワードを無理に詰め込む必要はありません。代わりに、ユーザーの好奇心を刺激する問いかけや、感情に訴えかける結論を冒頭に配置します。ただし、過度な煽りやクリックベイト(欺瞞的なタイトル)はGoogleのポリシーで禁じられており、長期的な配信停止につながるリスクがあります。
・大サイズ画像の必須要件とその設置
Google Discoverでは、幅1200px以上の高品質な独自画像の使用が推奨されます。小サイズの画像や低品質な画像は配信機会が減少します。
画像は記事内容を適切に表現し、視認性が高く、ユーザーが直感的に内容を把握できるものである必要があります。タイトルと画像の間に一貫性を持たせることも重要です。
クリック後のエンゲージメントは、記事の品質と配信継続性に直結します。
・フック(結論や問い)の設計:
ユーザーは特定の目的をもって記事を開いたわけではないため、導入部で結論や記事を読むことで得られるメリットを明確に示し、離脱を防ぐための「フック」を迅速に提示する必要があります。
・視覚的に訴えかける構成:
モバイルデバイスでの閲覧が主となるため、箇条書き、小見出しの多用、図解、動画の埋め込みなどを積極的に行い、視覚的な負担を減らします。一文一文を簡潔にし、段落を長くしすぎない配慮が必要です。
・モバイル体験の担保:
ページ読み込み速度が遅い、または画面を占有する広告が多いなど、ユーザー体験を損なう要素はエンゲージメント率の低下、ひいてはGoogle Discoverからの配信減少につながります。
Google Discoverには、特定の種類のコンテンツを禁じるポリシーが存在します。これに違反した場合、記事はDiscoverから除外されます。
禁止されているコンテンツ:
・誤情報(特に公共の利益に関するもの)
・露骨な性表現
・ヘイトスピーチ
・暴力的で残虐なコンテンツ
・扇動的な表現や過度に煽る表現
コンテンツ作成にあたっては、常に中立性と正確性を保ち、ユーザーの誤解を招かない表現を用いることが求められます。
【ご参考】Discover のコンテンツ ポリシー – Google 検索 ヘルプ
Google Discoverへの表示は、コンテンツの質だけでなく、サイトの技術的な基盤が適切に整備されているかにも大きく依存します。
Googleは、Core Web Vitals(コア ウェブ バイタル)がDiscoverランキングに直接影響するかどうかを明言していませんが、これらがユーザー体験の質を測る指標である以上、その最適化はDiscover対策においても必須要件です。
・LCP (Largest Contentful Paint):主要コンテンツの読み込み時間。
・INP ( Interaction to Next Paint):最初の操作に対する応答性。
・CLS (Cumulative Layout Shift):視覚的な安定性。
これらの指標は、モバイル環境での読み込み速度と操作の快適性に直結し、結果としてユーザーの離脱率とエンゲージメントに影響を与えます。モバイルフレンドリーテストで問題がないか確認し、高速化の取り組みを継続的に行う必要があります。
▼コアウェブバイタルの表示速度を向上させる対策について知りたい方は、こちらの記事をご参照ください。
コアウェブバイタル(CWV)改善:コーディング不要で表示速度を向上させる実践的対策
(※リンク投稿後に貼付け)
かつて、Google Discoverへの表示にはAMPの導入が必須とされていました。現在、Googleはコアウェブバイタルを満たしたすべてのウェブページがDiscoverへの表示対象となることを示しており、AMPは必須要件ではありません。
しかし、AMPはページの高速表示に優れているため、特にニュース性の高いコンテンツにおいては、依然として選択肢の一つとして検討の余地があります。サイトの技術リソースや運用体制を考慮し、最も効果的な方法を選択することが求められます。
Googleがコンテンツの内容を正確に理解するためには、構造化データの適切な実装が欠かせません。
・Article構造化データ:
記事の発行日、更新日、著者、画像などの情報をマークアップすることで、Googleにコンテンツの情報を正確に伝達します。Discoverでは鮮度が重要な要素となるため、日付情報の正確な伝達は特に重要ですす。
・サイトマップとRSSフィード:
新しい記事が公開された際、迅速にGoogleに通知し、クロールとインデックスを促すために、サイトマップを最新の状態に保ち、RSSフィードを適切に設定することが重要です。
Google News(ニュース)への掲載がGoogle Discoverへの表示に直接結びつくわけではありませんが、パブリッシャーセンターへの登録は、Googleにサイトの権威性と信頼性を明確に伝える手段の一つとなります。
・Google Newsへの登録:
特にニュース性の高いコンテンツを扱う場合、Google Newsの要件を満たすことで、サイトの情報発信源としての信頼性が高まり、結果としてDiscoverでの配信機会の増加につながる可能性があります。
・E-E-A-T情報の明確な提示:
記事には、著者名、略歴、連絡先など、コンテンツの専門性と信頼性を裏付ける情報を明確に記載することが、Discoverの評価を高める上で重要です。
Googleが最新のコンテンツを迅速かつ正確に認識できるよう、技術的な環境を整える必要があります。
・canonicalタグの適切な使用:
重複コンテンツの存在をGoogleに正しく伝え、評価の分散を防ぐためにcanonicalタグを適切に設定します。
・サーバー応答速度の向上:
サーバーの応答速度が遅いと、Googlebotのクロールが妨げられ、記事の鮮度が低下する可能性があります。安定した高速なサーバー環境の維持が求められます。
Discoverへの流入は、一時的なバズで終わらせず、継続的なサイト成長につなげることが目標です。そのためには、効果測定に基づいたPDCAサイクルが不可欠です。
Discover流入の効果測定には、Google Search Console(GSC)の「Discover」タブが不可欠です。このタブでは、Discoverでの記事のパフォーマンスを詳細に確認できます。
・合計クリック数:Discover経由での総流入量。
・合計表示回数:Discoverフィードに表示された回数。
・平均CTR(クリック率):クリック数 ÷ 表示回数。
平均CTRが最も重要であり、コンテンツの魅力度と適合度を示します。数値が低い場合は、タイトルや画像に改善の余地があることを示します。
Google Discover流入を増加させるための運用フローは、CTRの改善に焦点を当てて回転させます。
| No. | 項目 (ステップ) | 内容 (アクション) |
| 1 | 問題特定(Plan) | Google Search Console(GSC)で、表示回数が高いにもかかわらず、CTRが低い記事を特定します。これは、記事が配信されているものの、ユーザーの興味を引けていないことを意味します。 |
| 2 | 改善策の実行(Do) | 特定された記事のタイトル、主要な画像を、より好奇心を刺激するもの、またはより明確に内容を示すものに変更します。 |
| 3 | A/Bテストの実施(Do) | 可能であれば、複数のタイトルや画像をテストし、最も高いCTRを獲得できるパターンを特定するための実験を実施します。 |
| 4 | 効果測定と分析(Check/Action) | 変更後、GSCでCTRが改善したかどうかを追跡します。改善が見られた施策は定着させ、そうでない施策は再検討します。 |
CTRが改善し、流入が増加したとしても、ユーザーがすぐに離脱してしまえば、Google Discoverの評価は下がり、配信は再び減少します。
・Google Analytics 4(GA4)を活用した分析:
Discover流入ユーザーのセッション時間、エンゲージメント率、離脱率を分析します。これらの指標が悪い場合、記事の導入部や構成、モバイルでの読みやすさに問題がある可能性があります。
・質的改善の方針:
エンゲージメント率が低い記事に対しては、記事の主題の明確化、視覚的な要素の追加、本文の推敲を行い、ユーザーが記事を読み進めたくなるような体験を提供することを目指します。
今回は、検索とは異なるロジックでトラフィックを生み出すGoogle Discoverの仕組みを解説し、記事をフィードに表示させ、流入を最大化するための具体的な戦略とサイト要件についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
Google Discover攻略の鍵は、「E-E-A-Tに基づいた高品質なコンテンツの提供」、「ユーザーの興味関心を惹きつけるタイトルと画像の最適化」、そして「Core Web Vitalsを満たした技術的なサイト基盤の整備」という、三位一体の取り組みにあります。これらの要素を複合的に実行し、Google Search ConsoleのDiscoverレポートを活用した継続的な改善サイクルを確立することが、トラフィックの安定化とサイトの新たな成長につながります。是非自社サイトの戦略を考える上でご参考にしていただけると幸いです。