中国では、近年ますます多くの富裕層、すなわち「中国のお金持ち」が海外へと目を向けています。彼らは単に資産を増やすだけでなく、子どもの教育、生活の安定、資産の保全といった観点から、移住・海外投資・国際的なビジネス協力を活発に進めています。本コラムでは、2023年から2025年にかけての中国のお金持ちがどのように海外と関わり、どのような活動を展開しているのかをご紹介します。特に日本を含むアジアや欧米での動向に注目しながら、主要なトレンドを整理していきます。
中国は2023年時点で、世界で最も多くの富裕層(純資産100万米ドル以上)を海外に送り出している国となりました。移住先として人気なのは、アメリカ、カナダ、オーストラリア、そして近年急速に注目を集めるシンガポールや日本です。日本では特に東京都心の新築マンション市場に中国人富裕層が多数参入し、不動産価格の上昇要因の一つとなっています。
彼らが移住を希望する主な理由には、
中国のお金持ちは、海外においても不動産投資を軸にしながら、多様な資産クラスに分散投資を進めています。従来のアメリカ不動産への投資は減少傾向にある一方、東南アジアや日本への関心が高まっており、新築物件や高級住宅に加えて、ホテルや商業施設なども対象とされています。
また、株式・ベンチャー投資や、近年では暗号資産やNFTといった新興資産への投資にも積極的です。例えば、香港で再開された投資移民制度では、中国本土からの申請者の中に仮想通貨による資産証明を行う事例も見られました。
資産管理と承継のため、富裕層の多くは海外でファミリーオフィスを設立しています。特にシンガポールと香港が人気で、税制の安定性、金融インフラの整備、多言語環境などが魅力です。2024年時点で、シンガポールでは約2000のファミリーオフィスが稼働しており、その多くが中国出身の富裕層によるものとされています。
これらのオフィスは、不動産・株式・プライベートエクイティ・債券・慈善活動・後継者教育といった広範な分野で、資産をグローバルに管理・運用しています。
中国のお金持ちは、単なる資産家という枠を超え、海外企業との協業やグローバル市場への進出も積極的に行っています。自動車やバイオテクノロジー、AI、再生可能エネルギーといった分野で、欧米・東南アジアの企業と共同研究やM&Aを行う例も少なくありません。
特にシンガポールでは、現地のベンチャーキャピタルや政府系ファンドと共同でファンドを設立し、第三国への戦略的投資を展開する動きも見られます。また、香港を拠点にしたファミリーオフィスを通じて、グローバルなスタートアップ企業への支援も活発です。
中国のお金持ちは、かつての「国内投資中心」から、「資産・家族・ビジネスのグローバル展開」へと大きくシフトしています。日本を含む周辺国では、こうした中国マネーの動向に注目が集まると同時に、不動産・教育・金融など多方面でのインパクトが予想されます。今後もその動向は、地域経済および国際関係に大きな影響を与えるでしょう。