デジタル広告の運用において、自社のブランドイメージを損なう場所への広告露出を防ぐこと、あるいは特定のブランドを検索しているユーザーに対して適切にアプローチすることは、マーケティング戦略上の重要な課題です。Google 広告では、これらをより効率的かつ正確に管理するための機能として「ブランドリスト」を提供しています。
本記事では、ブランドリストの概要から、具体的な活用メリット、設定方法、そして運用上の注意点について解説します。
ブランドリストとは、特定のブランド名をリスト化し、Google 広告のキャンペーンにおいて「除外」または「配信対象の指定(ブランド制限)」に利用できる機能です。
これまで、ブランド名に関するコントロールは、キーワードの除外設定や、配置(プレースメント)の除外など、個別の設定を組み合わせる必要がありました。しかし、ブランドリストを活用することで、Google が保有する膨大なブランドデータベースに基づき、表記揺れや関連性の高いキーワードを包括的に管理できるようになります。
2025年現在、ブランドリストは主に以下のキャンペーンで使用可能です。
従来の除外キーワードは、指定した語句が検索語句に含まれる場合に広告を非表示にする仕組みです。一方、ブランドリストは「ブランドそのもの」を対象とします。例えば、特定の企業名やサービス名をリストに登録すると、そのブランドに関連する一般的な誤字や、他言語での表記なども含めて制御の対象となるため、管理コストを大幅に削減できます。
ブランドリストを導入することで、広告運用者はより戦略的な配信コントロールが可能になります。
自社ブランドと競合するブランドや、自社のイメージにそぐわない特定のブランドに関連するトラフィックを避けたい場合に有効です。ブランドリストに除外したいブランドを登録し、キャンペーンに適用することで、意図しないブランド名での広告露出を防ぎ、ブランドの信頼性を保護します。
検索キャンペーンで「ブランド制限」を有効にすると、指定したブランドリストに含まれるブランド(およびそのブランドに関連する商品やサービス)を検索しているユーザーにのみ広告を表示するように制限できます。これにより、広範囲なマッチタイプ(部分一致など)を使用しながらも、ターゲットとするブランドから外れたトラフィックを遮断し、コンバージョン精度の向上が期待できます。
新しいブランドが登場したり、ブランド名の表記が変わったりするたびに個別のキーワードを追加するのは煩雑な作業です。ブランドリストは Google のデータベースと連動しているため、リストを一度作成して複数のキャンペーンに適用するだけで、一括した管理が可能になります。
ブランドリストは、キャンペーンの目的に応じて「除外」と「制限(ターゲット登録)」の2つの方法で使い分けられます。ここでは、運用の現場でよく見られる活用シーンを紹介します。
P-MAXキャンペーンは自動最適化が進んでいる反面、意図せず自社ブランド名(指名キーワード)での獲得に偏ってしまうことがあります。
活用例:自社ブランド名をブランドリストに登録し、P-MAXキャンペーンから除外する。
効果:既存の顧客や認知済みの層による指名検索を避け、純粋な新規ユーザー(一般ワードでの検索層)への配信に予算を集中させることができます。
自社の商品とターゲットが重なるものの、比較検討されたくない特定の競合ブランドがある場合です。
活用例:競合他社のブランド名をブランドリスト化し、除外設定を行う。
効果:競合名を検索している「他社への関心が高いユーザー」への無駄な広告露出を抑え、費用対効果を高めます。
検索キャンペーンで「部分一致」を活用しながら、配信対象が広がりすぎるのを防ぎたい場合に有効です。
活用例:自社ブランドのみをブランドリストに登録し、指名検索用のキャンペーンに「ブランド制限」として適用する。
効果:部分一致の柔軟性を活かして、自社ブランドに関連する多様な検索クエリ(新製品名や口語的な表現など)を拾いつつ、ブランドと全く無関係な一般ワードへの拡張を阻止できます。
ブランドリストは強力なツールですが、その特性を理解せずに運用すると、意図しない機会損失を招く恐れがあります。
現在のGoogle 広告の仕様では、検索キャンペーンでブランドリスト(制限・除外)を新たに適用したり編集したりする場合、キャンペーン設定で「AI MAX(AI 最大化設定)」をオンにすることが事実上の必須条件となっています。AI MAXはAIによる最適化を加速させる設定ですが、ブランドリストはその「AIの動き」を制御するための境界線として機能します。
ブランドリストに含まれるブランドは、Google のシステムによって定義されています。リストに登録したブランドが、自社の意図する範囲(サブブランドや関連製品を含むかどうか)をカバーしているかを事前に確認する必要があります。
検索キャンペーンでブランド制限を適用した場合、広告が表示される対象はリスト内のブランドに関連する検索のみに限定されます。そのため、それ以外の一般的なキーワードでの流入は発生しなくなります。
Google 広告には「アカウント単位の除外キーワード」という機能もありますが、ブランドリストによる除外は、これらと併用が可能です。より広範なブランド保護を行いたい場合は、ブランドリストの活用が適しています。
A. いいえ。ブランドリストは Google のデータベースに基づいているため、スペルミス、表記揺れ、多言語表記なども包括的に対象となります。
A. ブランドリスト作成画面から、ブランドの追加リクエストを送ることができます。ただし、承認されリストに反映されるまでには時間がかかる場合があります。
A. 可能です。
Google 広告の「ブランドリスト」は、ブランドイメージの保護と、ターゲット精度の向上を両立させるための非常に合理的な機能です。複雑化する検索語句や配信面に一つひとつ手動で対応するのではなく、システム側のデータベースを活用することで、より本質的な広告戦略の構築に時間を割くことが可能になります。
まずは自社ブランドの保護や、特定の競合ブランドの除外など、明確な目的を持ってリストを作成し、小規模なキャンペーンからテスト運用を開始することをお勧めします。
A. 検索キャンペーンの場合、キャンペーン設定で「AI MAX(AI 最大化設定)」を有効にすることで、ブランド設定(除外・制限)のメニューが表示されるようになります。
Google 広告の「ブランドリスト」は、ブランドイメージの保護と、ターゲット精度の向上を両立させるための非常に合理的な機能です。複雑化する検索語句や配信面に一つひとつ手動で対応するのではなく、システム側のデータベースを活用することで、より本質的な広告戦略の構築に時間を割くことが可能になります。
まずは自社ブランドの保護や、特定の競合ブランドの除外など、明確な目的を持ってリストを作成し、小規模なキャンペーンからテスト運用を開始することをお勧めします。
参考🔗
Google 広告 ヘルプ 「ブランドリストについて」
Google 広告 ヘルプ 「ブランド制限について」
Google 広告 ヘルプ 「P-MAX キャンペーンのブランド除外について」