Meta(Facebook・Instagram)広告を運用していると、ある日自社広告の下に他社広告が並んで表示されているのを目にすることがあります。これが「複数広告主の広告表示(Ads from multiple advertisers)」です。広告主にとっては「自社広告の成果に影響が出るのでは?」と疑問や不安を感じやすいポイントでもあります。本記事では、この機能の概要や仕組み、運用上の注意点について整理します。
目次
「複数広告主の広告」とは、ユーザーがFacebookやInstagram上で特定の商品・サービスへの関心を示す行動(広告のクリック、カート追加など)をした際に、その商品と関連性の高い複数の広告主の広告がまとめて表示される広告機能です。
主にフィードやストーリーズ、リールといったプレースメントにおいて、「類似のおすすめ」などの見出しと共にカルーセル形式で表示されます。ユーザーにとっては新たな商品発見の機会となり、広告主にとっては購買意欲の高いユーザーへの新たなリーチ手段となります。
対応する配置は以下となります。(2025年8月18日現在)
この機能は、Metaの機械学習アルゴリズムによって制御されています。
発動条件:ユーザーが特定ジャンルの商品・サービスに興味を示したとMetaが判断したとき。
表示形式:ニュースフィードなどの広告枠に「あなたが興味を持っている他の広告主からの広告」として複数広告が並ぶ。
メリット(ユーザー視点):比較が容易になり、購買検討の効率が上がる。
デメリット(広告主視点):自社広告の隣に競合広告が表示される可能性がある。
システムは、ユーザーのプラットフォーム上での行動から「購買意欲のシグナル」を検知します。そして、そのユーザーが購入に至る可能性が高いと判断された場合に、関連性の高い他の広告主の広告を動的に組み合わせて配信します。
重要なのは、広告主が設定したコアオーディエンスやカスタムオーディエンスといったターゲティングの範囲を超え、Metaのアルゴリズムが「今、購買を検討している」と判断したユーザー群へも広告が配信される点です。これにより、広告主が想定していなかったコンバージョン機会の創出が期待されます。
本機能の活用にあたっては以下の点に留意する必要があります。
まさに競合商品を検討しているユーザーや、関連商品を検索しているユーザーなど、購買ファネルの最終段階にいる層に自社商品を提示できます。これは、自社のターゲティングだけではリーチしきれない、質の高い潜在顧客へのアプローチを可能にします。興味関心が高まったユーザーにリーチできるため、広告のクリック率やコンバージョンにつながる可能性があります。
広告が横並びで表示されるため、価格、スペック、送料、特典などの条件がユーザーによってシビアに比較されます。製品の競争力やオファーの魅力が低い場合、機会損失に繋がるリスクがあります。そのため、差別化要因を明確に打ち出す広告クリエイティブが不可欠です。
どの広告主の隣に表示されるかといった、詳細な配信コントロールは広告主側では行えません。配信の最適化は、Metaのアルゴリズムに一任されます。ブランドイメージの観点から特定の事業者との隣接を避けたいといった要望には応えられないため、その点は予め認識しておく必要があります。
以上の特性から、「複数広告主の広告」は特に以下のようなケースでの活用が推奨されます。
複数広告主が並ぶ状況では、ユーザーの視線を惹きつける広告クリエイティブが成果を左右します。短時間で価値を伝えられるビジュアルやコピー設計が重要です。
「送料無料」「限定キャンペーン」など即効性のあるオファーを打ち出すと、比較検討の場で優位に立ちやすくなります。
競合との併載によってクリック率やCPAに変動が起きる場合があります。Meta広告マネージャーのレポートやGA4と併用し、指標の変化を定期的に観察することが求められます。
広告単体の工夫だけでなく、オウンドメディアやSNSの情報発信を通じたブランド認知の積み重ねも、比較環境下で選ばれる要因となります。
本記事では、Meta広告の「複数広告主の広告」について、その仕組みからメリット、注意点までを解説しました。
「複数広告主の広告表示」は、Metaがユーザーにとって利便性の高い広告体験を提供するための仕組みですが、広告主にとっては競合との直接比較が発生する新しいチャレンジでもあります。大切なのは、この機能を恐れるのではなく、競合と並んでも選ばれる広告・ブランド作りに注力することです。
この機能を単なるリスクと捉えるのではなく、自社の製品やサービスの強みを再確認し、競争優位性を確立する機会として活用することが、今後の広告運用において重要となるでしょう。