Pinterestは、ユーザーが生活やファッション、インテリアといった様々な分野で「理想の自分」になるためのアイデアを見つけ、集めるプラットフォームです。
単なる情報収集ではなく、「実現したいこと」を探すユーザーが多いため、他のSNSに比べて購買につながりやすいという特徴があります。
本記事では、そんなPinterest広告の基本的な特徴から、多様な広告フォーマット、効果的なターゲティング手法までを分かりやすく解説します。
目次
Pinterestは、ユーザーが「理想の暮らし」や「なりたい自分」を実現するための、ひらめきやアイデアを見つける場所です。
インテリアやファッション、レシピ、旅行といった幅広いジャンルの中から、ユーザーは自身の興味関心に合わせて画像を検索し、気に入ったアイデアを「ピン(保存)」して「ボード(整理)」していきます。
このようにアイデアをストックしていく行動は、単なる情報収集にとどまらず、ユーザー自身の未来の計画や購買の意思決定へと自然につながっていきます。
多くのSNSが「今」起きた出来事を共有する「フロー型」であるのに対し、Pinterestは「未来の自分」のためにアイデアを蓄積していく「ストック型」のプラットフォームです。
ユーザーは「こんな暮らしがしたい」「次はこれを作ってみたい」といった目的を持ってPinterestを開きます。そのため、投稿(ピン)は時間が経っても価値が下がりにくく、数ヶ月前のコンテンツでも継続的に閲覧されます。この特性は、広告の長期的な効果にもつながります。
Pinterestの検索の約96%が、特定の商品名やブランド名を含まない「非ブランド指名検索」であると公式に発表されています。
つまりユーザーの多くは、「春コーデ」や「一人暮らし インテリア」といった漠然としたキーワードで検索しており、まだ何を買うか決めていません。そのため企業やブランドにとっては、まさにこれから顧客になりうるユーザーと、絶好のタイミングで出会えるチャンスがあります。
Pinterestは世界的にユーザー数が増え続けており、月間アクティブユーザーは5億人を超えています。日本国内でも約1,050万人が利用しており、重要なプラットフォームとして存在感を高めています。
広告も北米やヨーロッパだけでなく、日本を含むアジア各国で利用可能です。
Pinterest広告は、ユーザーの「アイデアを探す」という体験の中に自然に溶け込みます。そのため、広告がユーザー自身の意思で保存・共有されやすく、短期的な成果だけでなく、中長期にわたってブランドの資産となる効果が期待できます。
ユーザーは新しい情報を積極的に探しているため、広告も「邪魔なもの」ではなく「暮らしを豊かにするコンテンツ」としてポジティブに受け止められる傾向があります。実際、Pinterestが生活にポジティブな影響を与えると回答するユーザーは、他の主要プラットフォームと比較して2倍高い傾向にあります 。
広告ピンがユーザーに保存されると、その人のフォロワーにも情報が自然に広がります。これにより、広告費を追加でかけずにリーチやクリックを上乗せできる「アーンドメディア」としての効果が見込めます。
他のプラットフォームと比較して、広告表示あたりのコスト(CPM)が低い傾向にあります。そのため、広告の設計次第では低い予算でも多くのユーザーに情報を届けられる可能性があります。
ブランドの世界観やストーリーを深く伝えたい場合、Pinterestの動画広告は非常に有効な選択肢です。ユーザーが「アイデア探し」に集中しているため、他のプラットフォームに比べて広告への注目度が高く、視聴時間は1.5倍長く、ビューアビリティは3倍高いという調査結果もあります。
Pinterest広告は、ユーザーの邪魔にならないよう、通常のピン(投稿)に溶け込む形で表示されます。
ユーザーの過去の行動(閲覧、保存など)に基づき、「おすすめ」のピンが表示される場所です。新しい発見やブランドの世界観を伝え、潜在的な顧客と出会うのに適しています。
ユーザーが特定のキーワードで検索した際に表示されます。ユーザーの目的や興味が明確なため、商品の購入やサービスの申込といった具体的なアクションに繋がりやすいのが特徴です。
一つのピンをタップ(拡大表示)した画面の下に、関連性の高いピンが表示される場所です。類似商品を比較・検討しているユーザーに、選択肢の一つとして自社の商品やサービスを提示できます。
どの配信面でも、広告には「広告」というラベルが小さく表示されるだけで、見た目は通常のピンとほとんど変わりません。
ユーザーが広告をタップ(クリック)した後の動きは、キャンペーンの目的によって主に2つのパターンに分かれます。
認知度向上が目的の広告をモバイルでタップすると、まず広告が全画面に拡大表示されます。ユーザーは、この画面で広告ピンをボードに保存したり、詳細をじっくり確認したりできます。さらに画像をタップするか上にスクロールすると、ブランドのウェブサイトに移動します(この操作をアウトバウンドクリックと呼びます)。
一方、比較検討やコンバージョンが目的の広告の場合は、タップすると拡大表示を挟まずに直接ブランドのウェブサイトへ移動します。
また、パソコン(デスクトップ)で広告をクリックした場合は、キャンペーンの目的を問わず、常に直接サイトへ移動する仕様です。
広告をクリックしたユーザーにスムーズな体験を提供するため、広告クリエイティブと遷移先のランディングページの内容(ビジュアルやメッセージ)に一貫性を持たせることが非常に重要です。
例えば、特定の商品を広告で見せたなら、遷移先のページでもその商品がすぐに目に入り、購入できる状態にしておきましょう。この一貫性は、ユーザーの離脱を防ぐだけでなく、Pinterestのアルゴリズムに「関連性の高い広告」だと認識させ、広告全体の成果を向上させる効果も期待できます。
Pinterest広告は、設定した「目的(Objective)」に合わせて、システムが自動で配信を最適化する仕組みです。マーケティングファネルの各段階に応じて目的が用意されているため、それぞれの役割を理解した上で使い分ける必要があります。
まだブランドを知らない潜在層へアプローチし、興味のきっかけを作ります。
より多くのユーザーに広告を届け、商品やブランドの認知度・想起率を高めます。
ブランドの世界観を伝えるコレクション広告や、画面占有率の高いMax-width動画広告などが効果的です。
動画広告の視聴完了や視聴維持を最大化するように最適化されます。
ユーザーの目を引くため、冒頭1秒で主要な被写体を、3秒以内にブランド名を見せるなどのクリエイティブの工夫が求められます。
ブランドや商品を認知し、興味を持ったユーザーの関心をさらに引き上げ、具体的なアクションを促します。
広告のクリックを最大化し、自社のウェブサイトやECサイトへのトラフィックを増やします。
具体的な情報を探しているユーザーにアプローチするため、キーワードターゲティングとの相性が非常に良い目的です。
購入や申し込みの意欲が最も高いユーザーにアプローチし、最終的な成果を最大化します。
商品の購入、会員登録、資料請求など、ウェブサイト上での具体的な成果(コンバージョン)の獲得を最大化します。
成果を正確に計測し、最適化の精度を高めるために、PinterestタグやコンバージョンAPI(CAPI)の正確な設定が結果を大きく左右します。
EC事業者向け。登録した商品カタログの情報を基に、各ユーザーに合わせた商品を動的に表示し、サイト上での売上を最大化します。
ユーザーの行動に基づいたリターゲティング配信や、複数の商品をまとめて見せるコレクション広告と連携して使用します。
Pinterest広告は、マーケティングファネルの各段階で利用できる多様な広告フォーマットを提供しています。
ユーザーの好みに応じた結果を提示するクイズ形式のインタラクティブ広告フォーマットです。エンゲージメントを深め、パーソナライズされた体験を提供します。
画像引用元:Pinterest Business
複数のカードで一貫したストーリーをビジュアルで伝える広告フォーマットです。ブランドの多様な側面を魅力的に見せ、ユーザーの深掘りを促します。
画像引用元:Pinterest Business
全画面表示の画像や動画でブランドストーリーを伝える臨場感ある広告フォーマットです。アイデアの作成手順や詳細情報を提供し、ユーザーの行動を促します。
画像引用元:Pinterest Business
メイン画像/動画と複数のサブ画像で構成される広告フォーマットです。最大24点の商品を掲載可能で、ひらめきから購入への行動を促します。
画像引用元:Pinterest Business
その他にも、ショッピングアド・トラベルカタログ・リードアドなどの様々なアドフォーマットの利用が可能です。
Pinterest広告では、商品やサービスに最適なユーザー層へアプローチするために、様々なターゲティング手法を組み合わせることができます。これらは大きく分けて、新しいユーザーを見つけるための「コアターゲティング」と、自社のデータや過去の反応を活用する「カスタムオーディエンス」の2種類があります。
まだ自社ブランドと接点がない、幅広いユーザーの中から最適な層を見つけるための基本的なターゲティング手法です。
性別、年齢、地域、言語、デバイスといった基本的なユーザー属性でターゲティングできます。
ユーザーがPinterest上でどんなことに関心を持っているかに基づいて広告を配信します。興味・関心のトピックは非常に細かく分類されており、幅広い層からニッチな層まで、的確なアプローチが可能です。
(粒度の例)
レベル1:美容
レベル2:美容 > ボディケア
レベル3:美容 > ボディケア > ボディースキンケア
レベル4:美容 > ボディケア > ボディースキンケア > ボディ用角質除去剤
レベル5:美容 > ボディケア > ボディースキンケア > ボディ用角質除去剤 > ボディースクラブ
ユーザーがPinterest内で特定のキーワードやフレーズを検索したタイミングを狙って広告を表示できます。ニーズが顕在化しているユーザーに直接アプローチできる、強力な手法です。
自社が持つデータや、すでにPinterest上で接点を持ったユーザーを活用する、より高度なターゲティング手法です。広告の費用対効果をさらに高めることが期待できます。
自社が保有する顧客リスト(メールアドレスなど)をアップロードし、その顧客に直接広告を配信できます。
過去に自社のウェブサイトを訪れたことがあるユーザーに対して、再度アプローチ(リターゲティング)します。
過去に自社のピンを保存したり、クリックしたりしたことのある、エンゲージメントの高いユーザーに広告を配信します。
既存の顧客やサイト訪問者と似た行動特性を持つ、新しいユーザー層を見つけ出して広告を配信します。
広告の成果を正確に計測し、最適化するために以下の3つの設定が重要です。
①Pinterestタグ
サイト全体に「ベースコード」を、購入やカート追加といった主要な転換点に「イベントコード」を設置します。ユーザーのサイト内行動を計測する基本設定です。
②コンバージョンAPI(CAPI)
タグを補完し、計測漏れを防ぐため、サーバーから直接イベントデータを送信する仕組みです。クリックID(epik)の連携は必須で、イベント品質スコア(EQS)で正常に連携できているかを確認します。
③アトリビューション
「広告クリック後、何日以内の成果とするか」という計測ルールです。一般的に「クリック後30日間、表示後1日間」などがデフォルト設定となっています。ビジネスモデルに合わせて計測期間(ウィンドウ)をチームで統一し、モデル化データが含まれることを前提に評価します。
Pinterest広告を始める際に必要な初期設定とタスクを、7つのステップにまとめました。
Step 1:ビジネスアカウントの準備
まず、Pinterestのビジネスアカウントを開設し、自社のウェブサイトのドメイン認証を完了させます。これは、広告機能や分析ツールを利用するための最初のステップです。
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Step 2:計測基盤の構築
ユーザーの行動を正確に計測するため、「Pinterestタグ」と「コンバージョンAPI(CAPI)」の両方を実装します。特に、以下の主要なイベントは計測できるよう設定しておきましょう。
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Step 3:カタログの連携(EC事業者向け)
ECサイトをお持ちの場合は、商品データをまとめた「商品フィード」を登録します。広告配信の目的に合わせて、フィード内の商品をどのようにグループ分けするか(商品グループの設計)も、この段階で計画しておきます。
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Step 4:広告クリエイティブの準備
Pinterestの多様なフォーマットを活用し、ユーザーに響くクリエイティブを用意します。初期段階では、効果を比較検証できるよう、各フォーマットで2〜3案ずつ準備するのがおすすめです。
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Step 5:初回キャンペーンの設計
ビジネスの目的に合わせて、キャンペーンを設計します。
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Step 6:評価指標(KPI)の合意形成
キャンペーンの成果を正しく判断するために、CPA、ROAS、CTRなど、主要な評価指標(KPI)を事前に決めておきます。
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Step 7:アトリビューション設定の確認
Step6で決めたKPIの評価方法に合わせ、計測期間(アトリビューションウィンドウ)を統一しましょう。
Pinterest広告は、ユニークなユーザー行動、多彩な広告フォーマット、そして高度なターゲティング機能を組み合わせることで、ブランド認知から売上向上まで、あらゆるマーケティング課題に対応できるプラットフォームです。特に、ユーザーが未来の自分のために積極的にアイデアを探すという特性は、まさに「これから顧客になる層」へのアプローチを可能にし、他の媒体にはない大きな可能性を秘めています。
まずは、高い購買意欲を持つ未来の顧客と出会えるこのユニークなプラットフォームの活用を、ぜひ一度ご検討ください。本記事がそのきっかけとなれば、大変嬉しく思います。