台湾では、約95%以上の国民が安全な水道水を利用できる環境が整っています。このコラムでは、日本人旅行者や長期滞在者にとっても関心が高い「水質と検査基準」および「供給源と処理プロセス」を中心に、台湾の給水体制の特徴をご紹介します。
台湾では、環境部が定めた厳格な「飲用水水質基準」に基づき、計68項目にわたる検査項目が設定されています。これには、細菌、重金属、化学物質、消毒副生成物(トリハロメタンなど)が含まれます。たとえば、大腸菌群は100mL中6CFU以下、鉛は0.01mg/L以下、濁度は2NTU以下など、国際基準と同等またはそれ以上の厳しさです。
検査は各浄水場で定期的に実施されており、水源水の半年ごとの検査、出水(出荷水)の68項目全検査、配水管網末端の月次モニタリング(7項目)などが行われています。また、2024年には有機フッ素化合物(PFAS)も新たに規制対象となり、PFOA+PFOSの合計が0.00005mg/L以下とされました。
水質情報は各自治体や台湾自来水公司(台水)によって公開されており、住民や旅行者もインターネット上で定期的な水質データを確認できます。
なお、台湾の多くの都市部では水道水の安全性は非常に高く、検査基準を満たした水が供給されていますが、日本のようにそのまま飲用することは一般的ではありません。水道管の老朽化や地域差、水質変動への懸念から、多くの家庭や飲食店では一度沸騰させてから飲む習慣が根付いています。これは古くからの文化的慣習であり、日本からの旅行者や滞在者も、念のため一度沸騰させてから利用することが推奨されます。
台湾の水道水の90%以上は河川・ダムなどの地表水に由来し、一部地域では地下水も活用されています。水源としては、翡翠ダム、石門ダム、曾文ダム、高屏渓などが代表的です。
取水された原水は、各地の浄水場で以下のような処理工程を経て飲用に適した水に浄化されます:
これらの工程は、日本の浄水場とほぼ同様のプロセスであり、海外でも高い技術水準が維持されていることが分かります。離島では海水淡水化プラントが活用されるなど、地域に応じた柔軟な水処理が実施されています。
台湾の水道体制は、科学的かつ制度的に整備されたシステムにより、安心して水道水を使用できる環境を維持しています。特に日本からの観光客や滞在者にとっても、「飲める水」の品質が確保されていることは重要な生活基盤の一つです。日常の水に何の不安もなく暮らせることは、社会の安定と生活の質を支えるインフラといえるでしょう。