グローバルマーケティング事業(※)を展開しているアウンコンサルティング株式会社(東証スタンダード市場:2459、本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:信太明、以下「アウンコンサルティング」)はこの度、2024年の訪日外国人の年間動向調査結果と、2025年の予測をまとめましたので、お知らせいたします。
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・2024年の訪日外国人旅行者数は約3,686万人で、コロナ禍前の2019年を約500万人上回り、過去最高を記録した。1月を除くすべての月で2019年を上回る結果となり、12月単月においても過去最高を更新した。
・日本への旅行に関するキーワード数は、コロナ回復とともに伸長した。訪日客が多い韓国では「広島旅行」が圧倒的に多く、台湾は「熊本旅行」「広島旅行」の検索数が多い結果となった。
・2024年の訪日外国人旅行消費額は約8.1兆円と、2年連続で過去最高を記録。消費額を国別に見ると、中国が他国を凌ぐほか、欧米豪が増加傾向にある。また、買物代よりも宿泊料金や娯楽サービス費の増加率が高く、体験を重視する傾向が強まっている。
2024年の訪日外国人客(以下、訪日客)数*1は約3,686万人に達し、コロナ禍前の2019年を約500万人上回り、年間の過去最高記録を更新しました。さらに月別では、1月を除いたすべての月で2019年を上回っただけなく、12月においては単月で過去最高となりました。
出典:日本政府観光局(JNTO) による日本の観光統計データを参考に、アウンコンサルティングで加工
国・地域別では、1位が韓国881万人(2019年対比+323万人、+57.9%)、2位が中国698万人(2019年対比▲261万人、▲27.2%)、3位が台湾604万人(2019年対比+115万人、+23.6%)となりました。 韓国においては、円安や日本各地への地方路線の増便・復便等の影響だけでなく、Z世代の若者を中心にJ-POPやアニメなどの日本文化が流行していることが、訪日客数の増加に繋がっていると考えられます。また、中国においては、経済の減速もあって回復は鈍化していたものの、地方路線を含む増便等の影響もあり、復活傾向にあります。台湾においては、円安に加え観光促進キャンペーンの効果により、訪日意欲が高まる結果となりました。
出典:日本政府観光局(JNTO) による日本の観光統計データを参考に、アウンコンサルティングで加工
以下は2024年のインバウンド市場に関わる出来事を、時系列でまとめたものです。2024年2月に訪日客数が単月で過去最高を更新、4月は円安が急進し一時期1ドル160円を突破しました。2023年の水際対策終了をきっかけに、訪日客数だけでなく消費額も過去最高になるなど、インバウンド市場は大幅な回復をみせました。
また、夏以降はバイデン氏の撤退表明や岸田内閣の総辞職に続き、中国のビザ緩和拡大や日本の中国人旅行者ビザ緩和などがあり、今後も引き続き観光政策や経済政策が見直しされる点を視野に入れる必要があることがうかがえます。
以下の表は、2019年・2023年・2024年の10~12月*1における、各国からの訪日回数を比較したものです。2024年のリピーターの割合は、香港、台湾、韓国のように90%前後と高い国もあれば、インド、ベトナムのように20%前後のほか、英米豪ではリピーター率が2019年比でやや増加傾向にあるなど、国によって変動が大きい状況です。
例えば韓国では、初回訪問は2023年増加後に減少し、リピーター率は2023年減少後に増加していることから、アフターコロナで初回の旅行地として選択の上位にあげる*1一方、旅行ニーズの増加に合わせて他国への旅行欲も高まっていることが考えられます。
また、中国においては、原子力発電所の処理水放出や、中国経済の減速の影響により、2023年比でリピーター率が減少したと考えられます。英米豪においては、アフターコロナで旅行ニーズの増加とともに、今後は日本の中でも地方エリアの訪問意欲が高まっている*1ことから、引き続き初回、リピーターともに増加が期待できるといえます。
<初回訪問/リピーター数【10~12月】>
※70%以上を緑、80%以上を黄色、90%以上を赤く色付
出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査 2016年10月~12月、2019年10月~12月、2023年10月~12月集計結果
参考 表3 国籍・地域(21区分)別 回答者属性および旅行内容 【観光・レジャー目的】を参考にアウンコンサルティングで加工
以下は、調査した8ヶ国・地域*の「愛知旅行」、「広島旅行」、「石川旅行」、「熊本旅行」、「長野旅行」の検索数の合計値をまとめたものです。これら5県は、2024年10~11月の都道府県別宿泊者数トップ20より、2019年と比較して東京・大阪・京都・北海道など特に人気の観光地以外で宿泊者数が多かった県です。日本政府が添乗員の同行を伴わないパッケージツアーの受け入れを開始した2022年8月以降、検索数が伸びていることが分かります。
【Google AdWords検索数】
※Google AdWords キーワードプランナーツール利用による検索数データ
※調査対象国・地域:韓国・台湾・香港・タイ・マレーシア・フィリピン・アメリカ・オーストラリア
※検索キーワード
・愛知旅行:아이치 여행、愛知 旅遊、aichi travel
・広島旅行:히로시마 여행、広島 旅遊、hiroshima travel
・石川旅行:이시카와 휴일、石川 旅遊、ishikawa travel
・熊本旅行:쿠마모토 여행、熊本 旅遊、kumamoto travel
・長野旅行:나가노 휴일、長野 旅遊、nagano travel
また、訪日客の多い韓国・台湾のキーワード別の検索数をみてみると、韓国は「広島旅行」が圧倒的に多く、台湾は「熊本旅行」「広島旅行」の検索数が多い結果となりました。韓国は2023年7月、広島空港に韓国の格安航空会社(LLC)のソウル線が就航したこと、翌年1月には増便になったことで、韓国から広島へ行きやすくなったことが、増加につながったと読み取れます。
次に台湾ですが、2023年4月より、熊本県ご当地ガイドツアー『くまモンの歩き方』がリリースされたことや、2024年2月に台湾積体電路製造(TSMC)が熊本に進出したこと、また2023年1月より広島―台北便が再開し、同年5月に開催されたG7広島サミット効果で広島への訪日客が復活したことなどが要因と考えられます。
2022年の水際対策緩和以降、渡航経路の再開や就航・増便などで段階的に訪日客は回復をみせ、2024年は円安が追い風となり訪日客や消費額が過去最高につながったことが、これらの検索動向からもうかがえます。
※Google AdWords キーワードプランナーツール利用による検索数データ
以下は、2019年と2024年の10~11月における都道府県別宿泊者数をまとめたものです。宿泊者数上位10都道府県のうち千葉県を除くすべてで、コロナ禍前の2019年の数を上回りました。
特に石川県は、2019年対比で263.8%と全都道府県のなかで顕著な伸び率となりました。米大手雑誌ナショナルジオグラフィックの「 The 25 best places in the world to travel to in 2025(2025年に行くべき世界の旅行先25選)*2」では石川県の金沢が選ばれており、混雑を避けて「本物の日本」を体験できる場所として評価されました。石川県の宿泊者数を国別にみると、2019年比で台湾、中国、アメリカに加え、2024年ではオーストラリアも増えており、この4ヶ国で全体の約4割を占めています。
<都道府県別訪日客宿泊数【10~11月】>
※2024年上位都道府県を2019年値と比較。100%以上を赤く色付け
出典:観光庁 宿泊旅行統計調査 2019年、2024年 集計結果
参考 第1表 年、月(12区分)、施設所在地(47区分及び運輸局等)、国籍(出身地)(21区分)別外国人延べ宿泊者数(従業者数10人以上の施設)(10月~11月)を参考に
アウンコンサルティングで加工
2024年の訪日客旅行消費額は約8.1兆円(2019年対比+69.1%)となり、過去最高額を更新しました。円安により国内の商品やサービスの魅力が高まり、訪日客の消費意欲が旺盛になっています。費目別では宿泊費が約2.7兆円(2019年対比+93.6%、構成比29.4%→33.6%)と最も多く、買い物は約2.3兆円(2019年対比+43.8%、構成比34.7%→29.5%)と減少していることから、買い物よりも体験を重視する傾向が強まっていると考えられます。
出典:日本政府観光局(JNTO) による日本の観光統計データを参考に、アウンコンサルティングで加工
以下は、14ヶ国・地域の旅行前および滞在中の支出をまとめたものです。
旅行前支出について、すべての国・地域で2019年の数値を上回り、平均支出額が増加しました。特に「個人旅行向けパッケージ商品」では香港とインドネシア、「往復航空(船舶)運賃」では台湾が、いずれも100%を超える結果となりました。香港とインドネシアについては、アフターコロナや円安の影響で旅行ニーズが高まりパッケージ商品への消費が増えたこと、また特に台湾については、2024年に入り日本発着便6路線増加の影響が大きいと考えられます。
滞在中の支出でも、すべての国・地域で全体的に支出が増加し、2019年の平均消費金額を上回る結果となりました。費目別では、宿泊代、買物代、飲食費の順に消費が多い傾向がみられます。中でも台湾、イギリス、アメリカでは、買物代の増加率が100%を超えています。
さらに、宿泊代においては欧米豪からの訪日客の宿泊代が15万円を超えるケースが多く、円安の影響で高級ホテルや旅館への需要がこれまで以上に強まっていることが分かります。
<旅行前支出>
※0%以下を青、50%以上を黄色、100%以上を赤く色付け
<滞在中支出>
※0%以下を青、50%以上を黄色、100%以上を赤く色付け
出典:観光庁 訪日外国人消費動向調査 2019年10月~12月、2024年10月~12月 集計結果
参考5 国籍・地域(21区分)別 費目別購入率および購入者単価 【観光・レジャー目的】を参考にアウンコンサルティングで加工
円安を追い風にインバウンド市場は大幅な回復とともに、2025年の訪日客数は引き続き過去最高記録を更新する可能性があり、さらなる市場の拡大が見込まれます。
2024年10月、日本はコンデナスト・トラベラー誌において「The best countries in the world: 2024 Readers’ Choice Awards (世界で最も魅力的な国)*3」の1位に選出されました。また、同誌の「The Best Cities in the World: 2024 Readers’ Choice Awards (世界で最も魅力的な都市)*4」ランキングでも東京が1位に選出され、日本は「行くべき観光地」としての国際的な地位を確立しつつあります。こうした国際評価や2025年の大阪・関西万博が、さらにインバウンド市場を加速することになると考えられます。一方で、コロナ禍や人手不足によって一部の業界や企業の財務状況は完全に回復しておらず、インバウンド市場の拡大が見込まれる今も、プロモーションへの投資に踏み切れない企業が多いのではないでしょうか。さらに、不安定な国際情勢による地政学リスクの高まりや、原材料及びエネルギー価格の高騰・物価上昇、為替相場の変動など、依然として先行きは不透明な状況が続いています。2024年の選挙イヤーに続き、2025年も選挙動向に注目が集まることで経済に多大な影響を与える可能性があり、インバウンド業界を取り巻く環境はますます厳しくなることが想定されています。
このような中、2025年も引き続き桜や紅葉シーズン、夏休みといったピークシーズンへの対策がインバウンドを左右する重要なターニングポイントとなります。
また、訪日客数が増加する一方で課題となるのが、人手不足やオーバーツーリズム等、サステイナブルツーリズム(訪日客、業界、環境および訪日客を受け入れるコミュニティーのニーズに対応しつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光)への対応です。「観光立国」実現のためには、官民一体となったサステイナブルツーリズムへの取り組みが重要な鍵となります。
今後インバウンド産業はどう動いたら良いのかについての見解を、以下にまとめました。
▽将来を見据えたインフラ面への投資
滞在日数を伸ばし、地方へ誘致するためには、交通インフラ整備は欠かせません。公共交通機関へのアクセス向上のほか、地方への積極的なプロモーション告知のためにも、Webサイトやアプリの改善(UI/UX/機能改善/多言語化/海外SEO対策)等、短期的な施策だけではなく、中長期的な視野にたって、将来を見据えたインフラ面への投資が重要となります。
▽訪日客数・消費金額増加にともなう取り組み
日本政府が掲げる、2030年に訪日客数6,000万人、消費額15兆円といった目標の達成*1も視野に入れる必要があります。円安や国際評価を追い風に、日本の食文化やアニメなどのサブカルチャー、自然や寺社仏閣などの観光名所など、日本人気はさらに高まることが見込まれ、訪日客の記録更新に対応できるだけの体制を今のうちから整備しておくことが重要です。まずは、訪日客一人あたりの地方部宿泊数2泊等の目標達成を確実に、主要都市から地方へも足を伸ばし、「行くべき旅行先」として世界から選ばれる第2、第3の金沢を目指し、混雑を避けながらも日本の古き良き文化を感じられる体験型のコト消費へ繋げられるよう、日本独自のコンテンツを駆使した高付加価値プランの販売促進が重要となります。
▽オーバーツーリズム対策の推進
訪日客増加の先には、オーバーツーリズム対策が欠かせません。主要都市以外の地方誘致による混雑緩和、自然環境維持、治安維持のほか、地元住民との共存により、ルールやマナー啓発を加味した観光対策強化が期待でき、訪日客が日本に求める古き良き文化の維持、治安の良さ、清潔さなどにもつながります。
▽越境ECを活用した旅前/旅後プロモーション
訪日客創客のためには、旅行の段階にあわせたプロモーションが鍵となります。昨今SNS等のメディアの増加だけでなく、AIの登場で生活様式や消費行動、マーケティング環境の変化もあり、マーケティング手法が多様化しています。また、検索行動もこれまでの「ググる」からSNSでのハッシュタグ検索「タグる」へ変化しており、AI技術とデータ分析を駆使して導き出される、ターゲット層にあわせたマーケティング施策の検討が重要となります。
▽その他の取組み
・隣国や地域への観光交流
・各DMO、自治体、観光庁他、官民が一体となった訪日客創客への取り組み
・国際線の増便・復便
・初回訪問者の割合が多い国の訪日客の増加へ向けた取り組み(リピーター化)
このように、2025年はインバウンド業界を取り巻く環境に大きな期待が寄せられる一方で、訪日客や消費増加による一部の市場回復に依存することなく、さまざまな課題も見据えた変動の一年となることでしょう。そのため、可能な限り準備と対策を講じることが極めて重要です。当社もインバウンドマーケットの成長に少しでも貢献できるよう、全力で取り組んでまいります。
調査概要
【調査主旨】
2024年訪日外国人の年間動向と2025年の予測
【調査要綱】
調査日:2025年1月16日 ~ 2025年2月3日
調査対象時期:2012年~2024年
【出典】
※1 日本政府観光局(JNTO)
・日本の観光統計データ https://statistics.jnto.go.jp/
・訪日外客数・出国日本人数データ https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/visitor_trends/
・観光庁, インバウンド消費動向調査, 2025年1月15日 http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/syouhityousa.html
・観光庁, 宿泊旅行統計調査, 2025年1月31日 https://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/shukuhakutoukei.html
・観光庁, 観光立国推進基本計画(第4次), 2024年3月22日 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001743148.pdf
・国外旅行の意向等に関するアンケート調査, 2024年1月25日 https://www.jnto.go.jp/news/20240125.pdf
※2 National Geographic
The 25 best places in the world to travel to in 2025, 2024年10月22日 https://www.nationalgeographic.com/travel/slideshow/best-of-the-world-2025
※3 Condé Nast Traveler
The best countries in the world: 2024 Readers’ Choice Awards, 2024年10月1日 https://www.cntraveller.com/gallery/best-countries-world
※4 Condé Nast Traveler
The Best Cities in the World: 2024 Readers’ Choice Awards, 2024年10月1日 https://www.cntraveler.com/gallery/2014-10-20top-25-cities-in-the-world-readers-choice-awards-2014
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アウンコンサルティング株式会社
[事業内容] | グローバルマーケティング事業(海外SEO、海外広告) | ||
[設立] | 1998年6月8日 | ||
[本社] | 東京都千代田区丸の内二丁目2番1号 岸本ビルヂング6F | ||
[代表者] | 代表取締役CEO 信太 明 | ||
[社員数] | 34名(正社員のみ23名)2024年11月末現在 | ||
[資本金] | 100,000千円(資本準備金 538,774千円、2024年11月末現在) | ||
[URL] | https://www.auncon.co.jp | [プレスリリースに関するお問合せ] | 広報担当 TEL:0570-05-2459 MAIL:pr@auncon.co.jp |