台湾市場への進出を検討する企業にとって、購買意欲の高い若年層および現役世代へのアプローチは欠かせない要素です。その中で、台湾最大級の匿名掲示板・SNSとして圧倒的な存在感を放つのが「Dcard(ディーカード)」です。
本記事では、台湾でのマーケティングにおいて無視できないプラットフォームであるDcardの基本構造から広告メニューの特性まで解説します。

「Dcard(ディーカード)」は、2011年に台湾で誕生した匿名型ソーシャルコミュニティサイトです。
当初は大学生向けの掲示板としてスタートし、現在では幅広い年齢層に利用が拡大。特に18〜34歳の若年層の利用率が非常に高く、台湾国内では“Z世代の口コミ検索エンジン”とも言える存在です。
Dcardの最大の特徴は、実名制のSNSとは対照的な「匿名性」にあります。ユーザーは本名を伏せて投稿やコメントを行いますが、登録には学校や身分証を用いた認証が必要なため、情報の信頼性が担保されています。この仕組みにより、広告主は「ユーザーのリアルな悩みや欲求」が可視化された環境でコミュニケーションを図ることができます。
Dcard内には「看板」と呼ばれる多数のカテゴリーが存在します。美容、テクノロジー、金融、旅行、育児など、多岐にわたるテーマごとに独立したコミュニティが形成されています。匿名での自由な投稿が可能で、ユーザーは「看板(カテゴリー掲示板)」を通じて、旅行、恋愛、美容、ファッション、ライフスタイルなどあらゆる話題について語り合っています。
例えば、「日本旅遊板(日本旅行カテゴリー)」は14.8万人以上のフォロワーを抱え、月間閲覧数は約306万に達するなど、日本関連の情報ニーズも非常に高いのが特徴です。

月間アクティブユーザー(MAU)は2,000万を超え、台湾の若年層からミレニアル世代の多くが利用しています。台湾国内で「Dcardで検索してから買う」は、ごく自然な購買行動となっており、口コミと評価が購買行動に直結する代表的なサイトといえます。
台湾では「商品名+Dcard」「ブランド名+Dcard」での検索が多く、Google検索においても重要な流入経路となっています。


Dcard内で配信可能な広告は、ユーザーの閲覧体験を妨げないよう、通常の投稿内容に自然に溶け込む設計がなされています。
掲示板内のコメント欄や記事一覧などに表示される静止画広告です。高い視認性があり、クリック率の向上やブランド想起に効果を発揮します。新商品の紹介や期間限定のキャンペーン訴求に最適なメニューです。
ユーザーの閲覧動線上に自然に表示される動画形式の広告です。動きや音を伴うため、エンターテインメント、食品、コスメなど、視覚的な訴求が成果を左右する商材と非常に相性が良いのが特徴です。
商品情報をカード形式で表示し、ECサイトへの直接的な導線を強化するメニューです。商品の詳細情報や購入ページへのリンクを効果的に掲載できるため、ダイレクトレスポンスを目的とした運用に適しています。
Dcard内にブランド独自の記事を掲載できる形式です。商品の魅力をストーリー仕立てで紹介することで、ユーザーの深い共感と理解を促進します。実際に、ユーザーの83%が「記事を読んで購買行動へと進んだ」という実績もあり、信頼構築に極めて有効です。
Dcard Adsでは、広告主がスムーズに運用を開始し、PDCAサイクルを回すためのツールが提供されています。これらを活用することで、現地のトレンドに即した施策を迅速に展開できます。
広告コピー案を自動で生成できます。複数のパターンを容易に作成できるため、A/Bテストの実施に非常に役立ちます。
Dcard内に特設ページを構築できる機能を使えば、専用のランディングページを用意せずとも、詳細な商品情報を訴求することが可能です。
広告主限定の機能です。特定のキーワードがどれほど議論されているかを可視化できます。
毎月発行されます。プラットフォーム内の最新トレンドを確認できるため、現地のニーズから乖離しないプロモーション設計をサポートします。
Dcardでは、広告主の出稿効果を最大化するための無料ツールも提供しています。
広告主は、性別・年齢・地域・デバイス・学籍(学生か社会人か)などの属性でもセグメント可能なため、無駄のないターゲティングが実現できます。加えて、以下のような精緻なターゲティングも可能です。
ユーザーが閲覧・投稿した掲示板の履歴をもとに、関心テーマを自動判別。たとえば「日本旅遊板」や「美妝(スキンケア、メイクアップ)板」など、特定のカテゴリーに興味関心を持つユーザー層に絞って広告を配信できます。
ユーザーがDcard内で検索・投稿・コメントした直近のキーワードデータを分析。たとえば「日本旅遊」「日職(日本プロ野球)」「東京景點(東京の観光スポット)」などの語句に反応したユーザーに対し、関連性の高い広告を表示します。
Dcard Ads Pixelを活用して、ユーザーが広告主のWebサイト上で行った行動(例:ページ閲覧、商品カート追加、購入など)を収集。これにより、
・特定行動を起こしたユーザーに再アプローチ(リターゲティング)
・その行動傾向と類似する新規ユーザー群を自動生成(Lookalike配信)といった、行動ベースの高度なターゲティング配信が可能になります。
Dcardは、Z世代やミレニアル世代を中心とした台湾の消費者層に深くアプローチできる、非常にポテンシャルの高いプラットフォームです。効率的な支援ツールと精緻なターゲティングを掛け合わせることで、認知拡大から購買促進までを効率的に実現できます。
台湾市場での成功を目指す上で、Dcardという巨大なコミュニティに誠実に向き合うことが、成功への第一歩となるでしょう。