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    2021.09.30

Google広告の「地域に固有の追加料金」とは?

2020年年末頃からGoogleが欧州の一部の国への広告主に対して「地域固有の追加料金」が課せられることになりました。

具体的な金額はGoogle広告のヘルプページより確認が出来ます。

・イギリス:2020年11月1日から2%の英国デジタルサービス税が追加
・オーストリア:2020年11月1日より5%のオーストリアデジタルサービス税が追加
・トルコ:2020年11月1日より5%のトルコ規制実施事業費が追加
・スペイン:2021年5月1日より2%のスペイン規制実施事業費が追加。
・フランス:2021年5月1日より2%のフランス規制実施事業費が追加
・イタリア:2021年10月1日付けで2%のイタリア規制実施事業費が追加
・インド:2021年10月1日付けで2%のインド規制実施事業費が追加

※引用:GoogleWEBサイト「地域に固有の追加料金」
https://support.google.com/google-ads/answer/9750227

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既に欧州向けにGoogle広告を配信している広告主、また今後新たに同地域にGoogle広告を配信予定の広告主にとっては気になる情報となるでしょう。

ただ、実はこのことは別にヨーロッパに限った事でもなく、Google広告に限った話でもありません。今回はその経緯や今後の予想について少し掘り下げて触れてみたいと思います。

目次

正式には「デジタルサービス税」対策の一貫

このGoogleの「地域固有の追加料金」の発生については、実は「デジタルサービス税」に関する法律の施行が各国で進んでいる背景があります。

デジタルサービス税とは、簡単に言えば主にGAFAを対象とした国際課税の仕組みで、既に130の国と地域で大枠合意がとれている方針に基づく法改正の流れになります。

現在2023年本格稼働を目指して各国で法改正が議論され、施行が始まっています。
下の図表は になります(2021年3月現在)。赤色の国は既に導入済みの国。緑色は法改正が提案されている国。青色の国が導入の方針が明確になっている国になります。

ヨーロッパにおけるデジタルサービス税の導入状況

※引用:Tax foundation(https://taxfoundation.org/digital-tax-europe-2020/

デジタルサービス税ってどんな税制度?
では、ではその制度の建付けはどういったものなのでしょうか?この制度の施行に至る背景についてまとめてみたいと思います。

背景と経緯
現在世界の多くのグローバル企業は、各国に工場や事務所を設置して企業活動をしていますが、基本的な考え方として、「(法人の無にかかわらず)、事務所や工場など物理的な拠点に基づいて、その活動に課税する」という仕組みが根底にあります。

ただ、GAFAを代表とするIT企業の一部は、扱う商品が広告やアプリ、ソフトウエア、サービスなど無形の商品となるためとなるため、「事務所や工場など物理的な拠点がなければ国は課税しない」という原則に沿って税制が適応される事になります。

例えばアップルは米国以外の売上を、アイルランドやバージン諸島、オランダ等の税制上有利な国・地域に拠点を設置して売上を計上することで多額の租税を回避している現状があります。

またGoogleやAmazonもアイルランドやルクセンブルで多くの売上を管理しています。

このことによって特にデジタル消費国の大きいEU主要国が中心となって国際的に法整備を実施して、各国が実態に沿った税収を得られるようにしようとしている大きな背景があります。

負担者は下請けや広告主
また、(GAFAなど)税を収める企業側は、例えば今回取り上げているGoogleのように「地域に固有の追加料金」という名目で手数料を請求したり、アップルであれば「APP Storeの手数料引き上げ」と称して開発業者に課税分(に相当する)金額を請求し始めているというのが実情です。

つまり「デジタルサービス税」は、

・広告業界やGoogleに限った話ではなく、無形商材を扱う多国籍企業全てが対象であり
・現状は「支払いは下請けや広告主」が負担する方向で整備が進んでいる。

という事です。

現状と今後の展望

主な国の現状と今後の展望
また、この国際的な「デジタルサービス税」をめぐる制度作りについては大きく以下3点が柱となっています。

・売上高200億ユーロ以上利益率10%超の多国籍企業が対象
・追って100億ユーロまで引き下げる可能性もある
・売上高の10%を越える利益については20~30%を市場国に配分する設計

上記に該当する企業に関しては、仮に「事務所や工場など物理的な拠点がなくても」課税する方向で税制度の刷新を2023年を目処に進めるという方針になります。

ちなみに現状該当する多国籍企業は81社に上り、うち日本でも大手通信企業を中心に6社がその対象となっています。

Google広告について
そのため、現時点では欧州を中心に7ヵ国のみ「デジタルサービス税」もしくは「規制実施事業費」という名目で手数料を徴収していますが、今後その対象国は2023年に向けて拡大していく可能性が高いことが明かです。

名目こそ国により異なりますが、広告主側は現在より税負担の一環で数パーセントの手数料を支払う必要性が出てきそうです。

課題点も山積
ただ一方で、この制度にはまだまだいくつかの課題も残されていて、2023年までに130の国すべてでスッキリ法整備が進むのかという意見もあるようです。

例えば、以下のような課題です。

・最大の多国籍企業排出国である米国やGAFAをはじめとする企業側からの反発。
・アイルランドのように現時点で税収上の既得権益を有する国の反発。
・日・米租税条約のような二重課税を抑止する為の既存の仕組みの存在。

いずれも既存の仕組みが変更された場合に何かしらの不利益が生じる可能性を持つ立場にいる側の言い分といってしまえばそれまでかもしれませんが、いずれにしてもすべてが変われば税制上の世界的なルールが大きく変わる内容だけに、今後の動向には注目していく必要がありそうです。

まとめ

今回はGoogleの「地域に固有の追加料金」という一見すると広告の料金に関するルールの一旦のように見える内容に触れてみましたが、実は現在、全世界的な税制のルール変更の真っただ中にあるということがよくわかるかと思います。

また、Googleに限らず、他のインターネット系の企業或いは日系企業に対しても大きなインパクトが予想される法改正だけに、各国の制度改正の動きにも敏感になっておく必要があるといえるでしょう。

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