2025年1月、Googleの検索チームは次のように発表しました。
「将来的にはさらに多くのコアアップデートが実行され、さらに高速化されるだろう。これらのアップデートをより頻繁に行うようにランキングチームは取り組んでおり、SEO担当者が行った作業が検索結果に反映されるまでの時間を短縮したいと私たちは考えている。」
(参照元:Search Central Live Zurich 2024 / Google発表)
この発表は「アップデートの多頻度化」への転換点として注目を集めました。しかし2025年10月時点で振り返ると、これまでに実施されたのはコアアップデート2回(3月・6月に実施)、およびスパムアップデート1回(8月実施)と、発表当初の予想よりも少ない回数にとどまっています。
一方で、各アップデートの影響範囲は広く、特に6月以降はコンテンツ品質だけでなく、信頼性・専門性・ユーザー体験(UX)といった要素がより厳密に評価される傾向が強まりました。
その結果、「順位変動が一時的に収まらない」「AI生成コンテンツが突然評価を落とした」など、これまで以上に分析と対応の難易度が高まっています。
本記事では、2025年これまでのアップデートの全体像を整理するとともに、
・どのようなサイトが影響を受けたのか
・自社の評価変動をどのように分析すべきか
・今後、年末にかけてどのような変化が予測されるのか
といった観点から、データとKPIに基づく影響分析の方法を解説していきます。
2025年10月現在、Googleから公式に確認されている主要なアップデートは以下の通りです。
| アップデート種別 | 実施時期 | 概要と主な観測傾向 |
| コアアップデート | 2025年3月上旬 | YMYL(Your Money Your Life)領域を中心に影響が観測され、E-E-A-T(経験、専門性、権威性、信頼性)の深掘りが進んだ。特に、情報の裏付けが乏しいコンテンツの評価が低下。 |
| コアアップデート | 2025年6月下旬 | サイト全体の品質、特にユーザビリティやページの健全性が評価された。大規模なメディアやブランドサイトの評価が相対的に向上する傾向が見られた。 |
| スパムアップデート | 2025年8月下旬 | 検索スパムを検出する自動システムの改善。特に「サイト評判の不正使用(サブディレクトリ貸し)」や「大規模なAI自動生成コンテンツ」への取り締まりが強化された。 |
このデータからも分かるように、アップデート回数は少ないものの、その内容が「品質の根本的再評価(コア)」と「不正行為の徹底排除(スパム)」の両軸で進められており、サイト運営者にとっては対策の重要性が非常に高い年となっています。
参照元:
【Google公式】Google 検索のコア アップデートとウェブサイト
【Google公式】コア/スパムアップデート年表
2025年のコアアップデートは、従来の「コンテンツの専門性」を評価する基盤をさらに進化させ、「実体験(Experience)」と「信頼性の証明」に強くシフトしました。
・実体験(Experience)の重視:
単に正確な情報を提供するだけでなく、その情報が実際に「誰かの経験」に基づいており、ユニークな視点や深い洞察を含んでいるかが厳しく評価されました。例えば、製品レビューやサービス紹介において、単なる仕様の説明ではなく、筆者による具体的な使用感、検証結果、独自の知見が含まれているコンテンツが上位に浮上しています。
・エンティティ(実体)としての評価:
Googleは、コンテンツの内容だけでなく、執筆者やサイト運営企業を検索結果上の「エンティティ(実体)」として認識しようとしています。著者や企業の公式な実績、外部からの評判、ソーシャル上での活動などが間接的な信頼性シグナルとして機能し、それがランキングに反映される傾向が強まっています。
・ユーザーファーストの徹底:
技術的な問題(Core Web Vitals)はもちろん、モバイル環境での情報の探しやすさ、広告やポップアップによる阻害の有無など、ユーザーがコンテンツにアクセスしてから離脱するまでの全プロセスにおけるユーザビリティの完成度が、品質評価の一部として組み込まれています。
2025年8月のスパムアップデートは、検索結果の品質を劇的に改善するための重要な転換点となりました。
・取り締まりのターゲット:
このアップデートは、特に以下の2つのスパム行為を厳しく取り締まりました。
・サイト評判の不正使用 (Site Reputation Abuse):
ドメインの権威性を利用し、品質の低いコンテンツをサブディレクトリやサブドメインに掲載する行為(いわゆる「寄生サイト」や「ドメイン貸し」)が、集中的にペナルティの対象となりました。
大規模なAI自動生成コンテンツ:
AIツールを使用して大量に、かつ人間によるレビューや価値の付与がない状態で作成された低品質なコンテンツが検索結果から排除されました。これは、AI技術の進展に伴う検索結果の「情報ゴミ」化を防ぐためのGoogleの強い姿勢を示しています。
・影響:
スパムアップデートの影響を受けたサイトは、順位の低下に留まらず、インデックスからの大規模な除外を経験するケースが多く報告されました。これにより、グレーな手法に頼っていたサイトが一掃され、結果的にホワイトハットSEOを実践しているサイトの評価が相対的に高まる「地殻変動」が発生しました。
2025年のアップデートは、業界やサイトの特性によって影響の出方に明確な違いが見られました。
| 業界 (ジャンル) | 主な変動傾向 | 評価上昇サイトの共通点 |
| YMYL領域 (医療、金融、法律) | 変動幅が最も大きく、情報の裏付けがない個人ブログやアフィリエイトサイトが大幅に順位を落とした。 | 公的機関や専門家の団体・企業が運営するサイト、出典が明確な一次情報を提供するサイトの順位が安定・上昇した。 |
| 商品レビュー/比較 (家電、サービス) | 既存情報をまとめただけの比較サイトが苦戦。 | 実際に製品を購入・使用した上での検証写真や動画、独自の実験データを豊富に含むサイトが評価された。Experience(経験)要素が決め手となった。 |
| ニュース/メディア (速報性、話題性) | 権威性の低いサイトが軒並み評価を下げ、大手メディアや伝統的なニュースサイトへの一極集中化が進んだ。 | 情報源の信頼性(Provenance)が極めて重視され、著名な著者が執筆する記事が優位となった。 |
| 趣味/ライフスタイル (旅行、レシピ) | 専門性よりも「ユーザーの共感」や「実用性」が重視された。 | 訪問者によるレビューやコメントが多く、コミュニティ的な要素を持つサイト、または初心者でも実践しやすい具体的な手順を示すコンテンツが上昇。 |
アップデートの影響で順位を落としたサイトには、以下の共通の特徴が確認されました。
・オリジナリティの欠如:
他のサイトの情報を収集し、表現を少し変えただけのコンテンツ(リライトコンテンツ)。特にAIによる自動生成が容易になったことで、このような「付加価値のない」情報の評価は厳しくなりました。
・E-E-A-Tシグナルの欠落:
誰が、どのような資格や経験に基づいて書いたのかが不明瞭なサイト。特にYMYL領域では、執筆者の経歴や資格、所属組織に関する情報が不足しているだけで、コンテンツ自体の品質が高くても評価されにくい傾向にありました。
・技術的な軽視:
モバイル環境での表示速度が遅い、意図しないレイアウト崩れ(CLS)が発生している、広告が多すぎてコンテンツの閲覧を妨げているなど、ユーザビリティの低いサイト。
・不健全なサイト構造:
サブディレクトリやサブドメインを外部に貸し出していたサイト、またはページ数の割にトピックの網羅性が低すぎる(薄すぎる)サイト。サイト全体としての信頼性の低さが問題視されました。
一方で、アップデート後に順位が回復・上昇したサイトには、以下の積極的な対策が見られました。
・著者情報の強化と実名公開:
匿名やペンネームではなく、専門家による実名と顔写真、具体的な実績を明記した著者ページを全コンテンツに設置。これにより、コンテンツの「信頼性」と「専門性」がGoogleに明確に伝わるようになりました。
・一次情報への変換:
既存コンテンツを、ユーザー調査、インタビュー、実地検証などを行い、自社独自のデータや実体験を盛り込んだ一次情報に作り変えた。これにより、コンテンツの「独自性」と「経験」の評価が大幅に向上しました。
・スパム要素の徹底排除:
疑わしい被リンク、過度なキーワード詰め込み、不適切な広告表示などを完全に排除し、サイトのクリーン化を優先的に実施。特にスパムアップデート後にこの対策を行ったサイトは、次のコアアップデートで回復の兆しを見せました。
・トピックの網羅性と集中:
テーマがバラバラなコンテンツを削除・非公開にし、サイトの主要トピックに絞って深い情報を提供する「専門サイト」としての構造を強化。サイト全体の専門性が高まったと評価されました。
アップデートの影響を適切に対処するためには、感情的な憶測ではなく、データに基づいた客観的な分析が不可欠です。
変動が確認された場合、以下のステップで初期診断を行います。
・変動時期の特定:
Google Search Console(GSC)のパフォーマンスレポートを使用し、Googleのアップデート開始日と自社サイトのトラフィック・順位変動の開始日が一致するかを確認します。
・影響カテゴリの分離:
GSCの「ページ」レポートや「クエリ」レポートで、どのURL群(ディレクトリ)や、どのキーワード群(例:ビッグキーワード vs ロングテール)が最も大きく影響を受けたかを特定します。
・コンテンツタイプの分類:
影響を受けたページを、「製品レビュー」「ハウツー記事」「用語解説」「ニュース」などのコンテンツタイプに分類し、どのタイプのコンテンツ戦略が Google の新基準と衝突したのかを明確にします。
・変動の種類の確認:
トラフィック減少の原因が「順位の急落」なのか、それとも「順位は維持されているがCTR(クリック率)が低下した」のかを確認します。CTR低下は、タイトルやメタディスクリプションが検索意図に合わなくなったか、AI Overviewsに回答を奪われた可能性を示唆します。
アップデート後の影響を定量的に判断し、改善の進捗を測るために、以下のKPIを設定します。
| KPI名称 | 測定内容と設定理由 | 対策の方向性 |
| トップ10維持率 | 順位1位〜10位を維持している主要キーワードの割合。順位の平均値ではなく、最も重要な層の安定性を測る。 | 減少した場合、競合に対してE-E-A-Tシグナルが決定的に劣っている可能性が高い。 |
| 平均滞在時間(前月比) | Google Analytics 4(GA4)を使用。特に影響を受けたページ群の平均滞在時間を比較。 | 滞在時間が短い場合、コンテンツが検索意図を満たせていない(ユーザーがすぐに検索結果に戻っている)と判断し、コンテンツの質と構成を見直す。 |
| 新規獲得 キーワード数 | アップデート後に新たに検索結果100位以内にランクインしたキーワードの数。 | この数値が増加傾向にあれば、新規または改善したコンテンツがGoogleの新基準で評価され始めていることを示唆する。 |
| LCPスコア (モバイル) | Core Web Vitalsの最大コンテンツの描画時間(LCP)。特に影響を受けたページ群で計測。 | 技術的な健全性を測るKPI。スコアが低い場合、コンテンツ以前にサイトの基盤が評価を下げている可能性がある。 |
Googleが「アップデートをより頻繁に実行し、高速化する」という意図を示している以上、一度の対策で完了する時代は終わりました。対策後は、以下のサイクルを回すことが重要です。
・対策の実行:
影響を受けたページ群に対して、E-E-A-T強化、独自性付与、スパム排除などの対策を実施。
・30日後の効果測定:
対策実行後、少なくとも30日間は様子を見ます。Googleの再評価は時間がかかるため、短期間での判断は避けます。主要KPI(特に新規獲得KW数やトップ10維持率)を測定し、対策の方向性が正しかったかを検証します。
・次のアクションの決定:
効果が見られなかった場合は、対策が不十分であったか、根本的なサイト構造に問題がある可能性を疑い、次のアクション(例:低品質ページの非公開、専門家の監修追加)を決定し、再実行します。
2024年アップデートを参考に、Googleはホリデーシーズン(感謝祭、クリスマスなど)の時期を避け、年末にアップデートを実施する傾向があります。
・予測時期:
2025年11月下旬〜12月上旬にかけて、年内最後のコアアップデートが実施される可能性が高いと予測されます。
・予測される焦点:
【AI Overviewsへの適応】
AI Overviews(生成AI検索結果)の拡大が予測される中で、引用元として使われるためのコンテンツ構造(簡潔さ、構造化データ、信頼性)がより厳しく評価される可能性があります。
【コンテンツの差別化】
3月、6月、8月のアップデートを生き残ったコンテンツ同士の競争となり、さらに一歩進んだ「深い経験」や「独自のデータ」がなければ、上位を維持することが難しくなると予想。
参照元:「Google’s More Core Updates, More Often, Seems Unlikely」 by seroundtable
2026年に向けた評価軸は、Googleが掲げる「Helpful Content(役に立つコンテンツ)」の定義が、よりビジネスの健全性に近づくものと予測されます。
・ブランドの認知度と評判:
SEO対策に特化した評価だけでなく、企業やブランドが検索エンジン外(SNS、ニュースサイト、業界フォーラムなど)でどのような評判を得ているかという、オフライン/オフサイトの権威性が、ランキングにより強く反映されると予想されます。
・技術的要件の厳格化:
ウェブ標準(HTML、CSS、JavaScriptの適切な使用)やアクセシビリティ(障害を持つ人でも情報にアクセスしやすい設計)など、ウェブサイトとしての基本的な技術的要件の充足度が、もはや「あれば良い」ではなく「必須」の品質シグナルとなると考えられます。
・ユーザー行動データの活用:
滞在時間や直帰率といったサイト内行動データに加え、検索結果画面から特定のサイトへアクセスした後のユーザーの行動(例:すぐに検索結果に戻るかどうか)を、より深く評価システムに組み込む可能性があります。
年内、そして2026年に向けて、優先的に実施すべき現実的な対策は、以下の3点に集約されます。
・【最優先】「独自性」の棚卸しと追加:
既存コンテンツのうち、競合と内容が重複しているもの、独自の情報や経験が含まれていないものを特定します。そのページに対し、顧客インタビュー、自社データ、専門家によるコメントなど、「あなた(自社)しか提供できない」要素を最低一つ追加することを義務付けます。
・【構造的な対策】著者情報のエンティティ化:
コンテンツごとに執筆者または監修者を明確にし、その人物の専門的な実績や経歴を詳述した専用ページを必ずリンクさせます。企業サイトであれば、会社概要ページや沿革、受賞歴などのページを充実させ、サイト全体の信頼性を裏付けます。
・【技術的な対策】モバイルLCPの改善:
GSCのCore Web Vitalsレポートで「不良」または「改善が必要」と判定されたページに対し、モバイル環境でのLCP(最大コンテンツの描画時間)改善に集中して取り組みます。これは、品質評価の基礎であり、すべてのSEO施策の前提となる対策です。
今回の2025年コアアップデートおよびスパムアップデートの徹底分析レポート、いかがでしたでしょうか。
度重なる変動に不安を感じたり、大きなトラフィック減少を経験されたりした方もいらっしゃるかもしれません。しかし、Googleが目指す方向性は一貫しており、「小手先のテクニック」ではなく、検索ユーザーに対して「真に役立つ情報」と「信頼できる体験」を提供できるサイトを評価するというシンプルな原則に立ち返っていると言えます。
本記事でご紹介したKPIによる影響度診断と、具体的な対策の方向性は、自社サイトの回復と持続的な成長に向けた一歩となるでしょう。
もし、アップデートの影響有無をいち早く知りたい、迅速な対応策を知りたい、あるいは日頃からSEOを考慮したウェブサイト運用に課題を感じている場合は、ぜひアウンコンサルティングにご相談ください。